かなり運が良い人でないと100歳までは生きない
逆に、新型コロナウイルスの比ではない極悪な細菌が蔓延して、人類の寿命が一気に縮まっているかもしれないわけですから、90年も先のことはなんともいえません。人類の寿命は伸びているかもしれないし、縮むのかもしれない、というのが正しい理解です(現実に、「新型コロナウイルスのせいで、アメリカ人の平均寿命が、コロナ前よりも1年くらい短くなった」というニュースを最近耳にしました)。
そしてなんといっても、たとえば私と同世代の、2021年において60歳の男性の平均余命は(保険数理の平均余命表では)約24年なので、平均的に考えれば、依然として84歳前後で死亡すると予想されます(女性は89歳前後)。かなり運が良い人でないと、100歳までは生きないでしょう(ちなみに、2021年において60歳の男性が100歳まで生きる確率は5%弱のようです)。
「ピンピンコロリ」が実現できる人はおよそ2割
そうはいっても、昔より長寿化したことは事実です。84歳まで生きるとすると、60歳から起算してもまだ24年もありますし、もっと長いかもしれません。そう思うと、経済的な基盤をあらかじめ整えておかなかった場合には、「一生働くしかないか……」という状態に陥るのも無理はありません。
また、長寿化に歩調を合わせるように、年金支給時期の後ろ倒しが検討されています。近い将来、きっと年金受給開始時期そのものが75歳までに延期されるでしょう。そうなるまでに20年はかからないでしょうから、現在50歳より若い人は、「75歳まで働くのか……。それって、一生働くようなものだよな……」ということになりそうです。
好きな仕事をしているのであれば、「一生働く」のは願ったり叶ったりですが、そうではない場合は、かなり過酷です。
そしてここで、「そもそも、一生働くというのは、リアルにはどういうこと?」と考えると、「一生」ではなく、「働けるうちは働く」ということなので、「働けなくなってからはどうするの?」という問題が残るのです。
いわゆる「ピンコロ(ピンピン元気で、急にコロッと他界すること)」ができない限り、この問題はついて回ります。ちなみに、「ピンコロ率」には諸説ありますが、おおむね20%弱のようですから、80%強の人は、「働けなくなってからはどうするの?」という問題にいずれ直面するのですが、世間の多くの人はそういった「不都合な真実」からは目を背けているようです。
しかし、現実から目を背けてはいけません。かなり高齢になるまで働いたとしても、結局、終末期の何年間かは、働かなくても生活していけるようにしておかなければならないのです。