逆に黄砂はアルカリ性であり、それが酸性雨の発生を抑えているという報告もあるから環境とは複雑だ。

中国政府も、黄砂を抑えようと耕地に植林をして森にもどす「退耕還林」政策や、放牧禁止を打ち出している。だが、これも逆効果になりがちだ。

乾燥地に木を植えたら、樹木は水を吸い上げて余計に乾燥を進めてしまう。

地下水の汲み上げは、塩類集積を伴い大地を不毛にしかねない。植える樹種も、本来その地に生えていた低木や草ではなく、人間に有用な樹種を選びがちだ。しかも植えるために、乾燥地に根付いた草木を刈り取ってしまう。

植林しても逆効果

日本からも中国の砂漠に木を植える植林ツアーが催されていて多くの人が参加している。木を植えに行くボランティア活動と美しく語られがちだが、実はこれも乾燥を進めて黄砂を拡大する危険な行為ではないか。

田中淳夫『虚構の森』(新泉社)
田中淳夫『虚構の森』(新泉社)

また草原での放牧を禁止したことで、遊牧民は許された狭い範囲に多くのウシやウマを放すことで植生をより破壊してしまう。

これまでの放牧には、草の量と生える季節を考えて循環させる知恵があったのが、それを壊してしまったのだ。あるいは餌としてトウモロコシなどを栽培せざるを得なくなり、草原を耕地にしてしまう例もあるそうだ。

黄砂に限らないが、中央アジア、南北アメリカやアフリカなど各地で不毛の地の拡大が世界的な問題となっている。

対応を誤ると、より被害を拡大させてしまうだろう。

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