もし鼻水や目のかゆみがひどい時、あるいは喘息ぜんそくなどが起きた時は、花粉症だけでなく、黄砂の影響を疑ってもいいだろう。

一般に花粉症では、喘息や咳は起きないと言われているからだ。

黄砂の主成分は、石英せきえい長石ちょうせき雲母うんも、カオリナイト、緑泥石りょくでいせきなどの鉱物だ。

これらは日本に飛んでくる途中で大気中のPM2.5と呼ばれる微細な排気ガス成分のほか、カビや細菌などを付着させる。これらがアレルギーほかの健康被害をもたらす可能性がある。

中国の年間被害額は7000億円

ところで、黄砂が飛ぶ原因は、あまり知られていない。

日本では古くからの文献にも「春霞」として春先に遠方が見えなくなる空気の濁りが記載されているから、昔からある自然現象だと思われてきた。

たしかに黄砂が飛ぶこと自体は、古代の中国でも起きていたのだが、近年、その発生頻度と規模は拡大し、大規模な環境問題となっている。

もちろん日本だけでなく、足元の中国の被害は年間7000億円相当に達するとされ、朝鮮半島にも甚大な影響をもたらしている。

農作物被害、視界を奪う生活被害、吸い込むことの健康被害に加えて、エンジンに吸い込まれることで自動車などの故障が増えた。

しかも黄砂の規模は以前より格段に大きくなっている。

中国の環境問題を研究してきた大阪大学大学院の深尾葉子教授によると、日本まで飛んでくる砂は、従来言われてきたタクラマカン砂漠からではなく、より日本に近いモンゴルや内モンゴル、新疆しんきょうウイグル自治区、黄土高原、華北地方からだという。

モンゴル ユルト ゲル テント
写真=iStock.com/Ian Finch
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具体的な発生源は、農地や放牧地、道路などが大きかった(『黄砂の越境マネジメント』より)。

つまり中国の農地や草原は、毎年500万トンの土を失っていることになる。