仏の世界観は「失敗」で終わらない
それでは、最後は「仏の世界観」でこの節のテーマをまとめましょう。
「失敗した……」
そう思いうなだれたとき、自分で自分の物語に幕を下ろしてしまっているのかもしれません。絶え間なく続く流れの中で、私たちが知覚できる時間はごくごく僅かです。その中の、さらにほんの一瞬を切り出して「失敗」と名付けるのは、われわれの眼を覆っている煩悩の所業です。私たちの存在というのは、思っているよりも、ずっと広く、喜ばしいものであるのです。
大丈夫です、つらければ落ち込んだっていい、元気が出ないのならば、静かに休んでいればいい。まずは一日一日を過ごすことができれば、とりあえずそれで百点満点です。
落ち込んでいるときは、全てが出口のないトンネルのように感じられるかもしれませんが、そこもまた、仏さまの掌の上、光に照らされている場所なのです。
南無阿弥陀仏をとなうれば
十方無量の諸仏は
百重千重囲繞して
よろこびまもりたまうなり
(東本願寺出版『真宗聖典』488頁)
ゆっくり休んで顔を上げたとき、あなたはあなたの物語がまだ続いていることに気づくはずです。