看護師も「大丈夫ですよ」とは言ってくれなかった
出産から2日目、耐えられなくなった私は安心したいがために看護師さんに聞きました。
「あの……良太に何かあるんですか?」
私が期待をこめて想像していたのは、「何もないですよ」「元気ですよ」「大丈夫ですよ」という言葉が返ってくることだったのですが、実際はそうではありませんでした。
「あぁ……先生に聞かれましたか……」
え? なんのこと? 私には全く心当たりがありません。
私の表情がみるみるひきつっていくのを見て、看護師さんは、しまったという表情をされていました。その瞬間、良太に深刻な何かがあるということが直感としてわかりました。
同時に、それが何なのか、今すぐ知りたくなりました。どんなことであろうとも、本当のことを知りたかったのです。思わず、看護師さんに詰め寄ったのでしょう。
「わかりました、先生を呼ぶのでお待ちください」
この言葉に、何かあるかもしれないという予想は、何かあるという確信に変わりました。そして激しい不安におそわれました。その日の夕方、夫と私は先生の説明を受けることになりました。
「もしかしたら寝たきり介護」医師からの宣告の中身
「岸田さん、落ち着いて聞いてください」
という先生の一言から説明ははじまりました。
「息子さんにはダウン症があります。知的障害も伴うかもしれません」
ダウン症? 知的障害?
全く予想もしていなかった重たい言葉に私の頭は真っ白になりました。
「成長しないと障害の程度はわからないけれど、重度の場合は歩けなかったり、話せなかったりすることもあります。心臓病などの合併症がある確率も高く、もしかしたら寝たきりで介護が必要になるかもしれません」
その当時はダウン症のことも理解していなかったし、知的障害といわれてもどんなことが息子におこるのか、想像すらできませんでした。ただ一つ理解できたことは、良太は他の子とは違う、「普通の子」にはなれないということでした。