※本稿は、たくきよしみつ『マイルド・サバイバー』(MdN新書)の一部を再編集したものです。
買ってもいい第1条件は「すぐに住める家」
買ってもいい田舎物件の第1条件は、すでにすぐに住める家が建っていること、です。
きれいな家に住みたければ、中古の家をリフォームすればいいのです。建築費用において基本の構造部分はかなりの割合を占めますから、構造体だけを生かして外観をすっかり変えるような大胆な改築でも、ゼロから建てるよりはずっと安くできます。
では、すぐに住める家のついた物件ならいいかというと、そう簡単ではありません。
田舎の中古住宅物件は、大きく分けて3種類あります。どの種類なのかによって、そこで暮らすスタイルが違ってくるのです。
その3種類とは、
① 古くからある集落にある空き家
② バブル期にできたリゾート分譲地(別荘地)の空き家
③ 田舎に新たに造成された新興住宅地の空き家
です。田舎物件初心者は、この3種類の違いをしっかり認識することから始めなければいけません。
集落にある空き家に住むこと=集落の住民になること
①の「古くからある集落にある空き家」というのは、農家物件などがその代表例で、今までその土地の人が住んでいた物件です。
私が最初に買った越後の家はこれに該当します。売り主のOさんは農家ではなく、地元の工務店勤務のかたでしたが、十数軒ほどの限界集落の一員としてそこに何十年も住んでいました。「ほしば」という屋号もついていて、近所の人に説明をするときは、「Oさんが住んでいた家を買った者です」と言っても通じないのが、「ほしばの……」と言えば一発で「ああ、あそこか」と理解してもらえました。その地域は苗字が同じ「Oさん」だらけだったので、「Oさんの家」では通じなかったのです。
こういう家を買って住むということは、その地域の一員になることを意味します。都会から引っ越して来て何も分かっていない人、という認識はされても、そこに住み始めた瞬間から否応なくその地域社会、集落の住民として扱われます。集落の自治会の細かい決まりや、土地に伝わる風習・因習にも多かれ少なかれ従わないと、摩擦を起こしかねません。