【山本】さらに私たちは総合スーパーとして多くのテナントがあり、食品以外の商品も取りそろえています。それらを活用して来店動機を増やすべく、商品を単品で売るのではなくメニューの提案やイベントの開催等も行っています。

例えば「カレーフェア」を開催するなら、食品以外にもカレーを美味しく食べるための道具やカレーに合うデザート、カレーパンなど、カレーにまつわるあらゆる商品を取りそろえて売場全体をカレー一色にします。週替わりでさまざまなフェアをやりながら、お客さまに驚きや楽しさを提供していく。多くのお客さまの悩みである献立への提案力を上げていく。付加価値を上げることで、価格とのバランスをとることに今取り組んでいます。

【田中】平日の顧客が望んでいるのは、いかにワンストップで簡単に最寄品もよりひん(※1)が買えるかということなので、そこはイトーヨーカドーの強みですよね。

※1 最寄品:日常に使用する製品のうち、自宅や職場なども最寄りの店舗(コンビニやスーパーなど)で買う商品のこと。

【山本】そうですね。まだ強みとまでは言えないかもしれませんが、そこを磨かないといけないと思っています。

多くのコストがかかるネットスーパー事業

【田中】次におうかがいしたいのが「ネットスーパー」事業についてです。小売・スーパー各社は今、ネットスーパーに相当力を入れています。各社の決算を見ると、スーパーはセルフサービス方式でありながらも、営業利益率が非常に厳しい状況です。その上、ネットスーパーは、追加で品物のピッキングや配送、デジタルへの投資が必要であり、多くのコストがかかるからこそ黒字化が難しい事業だといわれてます。一方で、イオン発祥の地である三重県にあるスーパーサンシは、いち早くネットスーパーを黒字化しています。

ネットスーパーのイメージイラスト
写真=iStock.com/Bet_Noire
※写真はイメージです

黒字化の秘訣を分析してみると、まずは自社配送だということ。二つ目はサブスクの形態である有料会員制度を採用していることです。有料会員制にすることで配送料を顧客に一部負担してもらう。顧客からすると毎月の会費を払っていますから、より多く買おうという気持ちが働き、利用促進につながっています。

さらにスーパーサンシは顧客宅にロッカーを置くことで、配送を一度で確実に行えるようにしたり、スマホアプリ等ネット周りの環境を自社開発してコストを削減する一方で、顧客にスピーディーに対応していくことを重視しています。この辺りが成功の秘訣だと分析していますが、一方でこれを大規模展開する大手が実現するのは難しい。ニッチであるからこそ成功したという側面もあると思います。この点を踏まえて、イトーヨーカ堂はネットスーパーをどのように進化させていこうとお考えですか?

【山本】私たちは店舗を起点にネットスーパーを運営していますが、大きな課題が二つあります。一つは店舗の商品を扱っているために欠品の問題があり、お客さまの要望に100%応えられていないこと。また、ネットスーパーで求められる商品と店舗で求められる商品は必ずしも同じではありません。

もう一つは店舗が起点だからこそ、作業スペースのキャパシティと受注率に限界が生じています。さらに、ピッキングや配送にコストがかかる分、利益をあげることが厳しい状況が続いています。ただし、これからはより一層共働きの方も増えるでしょうし、ご年配の方の来店が難しくなってきますので、ニーズは間違いなく高まっていくはずです。