このままではすべての上場企業が上場廃止になる可能性も

中国政府がPCAOBによる検査を拒否している以上、このまま事態が進展すれば、SECが対象としている273社の中国企業はすべて上場廃止となる可能性がある。

もしそうなれば、中国経済、中国企業にはどのような影響が出るのだろうか?

体力のある大企業が今、リスク回避策として取り組んでいるのが香港での同時上場だ。上場廃止警告リストに掲載された企業では、アリババ、バイドゥ、JDドットコム、ウェイボー、ビリビリ、理想汽車などがすでに香港市場に上場するなど、ブームの様相を呈している。

香港背景の高層ビルに株式市場
写真=iStock.com/MJ_Prototype
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さらにEVメーカーのNIO(蔚來汽車)にいたっては、米国、香港に続いてシンガポールにまで上場、3つの市場で上場する初の中国企業となった。

香港やシンガポールへの上場はどの程度の価値があるか不透明

グローバルに移動する投資マネーは香港、シンガポールの株にも同じように投資することができる。米国で上場廃止になったとしても大きな支障はないとも考えられる。ただし、これはあくまで理論上の話である。

現実にはアリババを始め、米国と香港の双方に上場している中国企業も、株式売買の大半は米市場で行われている。世界一の金融市場で上場することで投資家の注目を引きつけられるという側面もあり、果たして香港だけの上場になっても同じ価値を保ち続けられるかは、実際に蓋を開けてみなければわからない。

「試金石となるのはティックトックを擁するバイトダンスの上場だろう」と、ある中国ベンチャーキャピタル(VC)関係者は指摘する。トランプ前米大統領から「ティックトック禁止令」が出された経緯もあり(後に撤回された)、バイトダンスの米国上場は困難とみられる。そのため香港市場への上場が有力視されているが、果たして香港市場単体での上場に世界的なサービスとなったティックトックにふさわしい値がつくのか、中国VC業界は注目しているという。

バイトダンス自身も不安があるのか、秒読みと言われたIPOはいまだに実行されていない。