「日本に迷惑をかける中国人は許せない」

現代中国のオタクたちは、ゼロ年代後半ごろの中国の大規模位掲示板「百度貼吧」(bǎi dù tiē ba)の、一部のコミュニティでみられたユーザー文化のノリを継承している。すなわち、往年の2ちゃんねるやその類似・関連サイトの影響をうけた、悪ふざけや不謹慎ネタを好むネットカルチャーだ。アメリカでアノニマスやQアノンの母体になった4chや8kunとも、広い意味では根を同じくしている。

ただし近年の中国の場合、いわゆるメジャーなカルチャーが習近平政権の礼賛と愛国主義の宣伝で真っ赤に染まっていることから、ネット民の一部はそれに反発する形で、激しい反中国共産党・反習近平(「反共反習」)や反中国人(「支黒」)の色彩を帯びることになった。

現在、中国国内外における30歳前後の若い中国人は、基本的に自国の体制を支持しているか、すくなくとも好意的中立という立場の人が多い。ただ、反体制系のネットカルチャーと日本のアニメなどの二次元文化の親和性が高いためか、在日中国人の場合は若者の1割くらいは中国政府に批判的な人がいる(極端な立場である「支黒」はもうすこし少ないが)。事実、江戸川のグループの代表者の1人も話す。

「僕らはもともと、在日中国人のマナー問題や反日的な言動を調べていた有志のグループです。日本が好きでこの国に来ていますから、日本に迷惑をかける中国人は許せないと思って。有名私立大学の留学生入試の、カンニンググループの微博(LINEに似た中国のメッセンジャーアプリ)のグループに潜入したりしていました」

逮捕者も出たカキ殻の不法投棄問題

彼らはやがて、江戸川で数十人以上の中国人が勝手にカキを採り、殻を周囲に大量に投棄して社会問題になっていることを知る(注.これ自体は5年ほど前から深刻な問題として報じられており、今年7月にはカキ殻約10キロを投棄した容疑で27~59歳の中国籍の女が逮捕されている)

河川敷付近にはカキ殻の投棄を禁じる注意書きが多数。日本語のものもあるが、中国語の看板が特に目立つ。社会問題なのは間違いない。
筆者撮影
河川敷付近にはカキ殻の投棄を禁じる注意書きが多数。日本語のものもあるが、中国語の看板が特に目立つ。社会問題なのは間違いない。

そこで、仲間うちで呼びかけてカキ殻回収と清掃活動をおこなうことにした。ノリとしては、「やらない善よりやる偽善」のミームで知られる往年の2ちゃんねらーの湘南ゴミ拾いオフ(2002年)などと近い行動だろう。代表者は言う。

「本当は(活動についての)報道いらないです。好きで勝手にやってるだけなので」

とはいえ、中心メンバーは日本で就職や起業をしていて、日本語も流暢な30歳前後のいい大人だ。活動にあたっては地元の市民団体にしっかり話を通し、在日中国人叩くような抗議の主張は薄め、清掃それ自体は政治色のないボランティアという形にした。