国内向けに特化するあまり競争力がない日本コンテンツ

日本コンテンツのガラパゴス化とは何か。

それは、コンテンツが日本向けに特化しすぎているあまり、海外ファンの消費行動を妨げ、競争に負けてしまうという意味だ。

日本に住むわれわれには当たり前すぎて意識することもないが、日本のコンテンツは日本的価値観、生活習慣、思想がふんだんに盛り込まれている。例えば、主人公が学生のアニメでよく登場する「部活」や「制服」といった要素がこれに当たる。

日本の学生のイメージイラスト
写真=iStock.com/ringo sono
※写真はイメージです

海外ではこうした要素は一部の私立学校でしかなかったり、存在そのものがないことが多く、一般的とは言えない。当然そういった要素に慣れ親しんでいない海外のファンがこうした要素を含む作品を楽しむには少なくとも抵抗があり、慣れや説明が必要となる。

日本の漫画やアニメは昔からそのままの状態で海外で享受されてきた。

1965年にはアメリカでアストロ・ボーイ(鉄腕アトム)が出版されているし、例えば『超時空要塞マクロス』、『超時空騎団サザンクロス』、『機甲創世記モスピーダ』などのロボットアニメを再編集した『ロボテック』という作品が1985年にアメリカで放映され、1991年には大幅な修正を行った中国版ロボテック『太空保塁』が中国本土でも放送された。

当時は「日本独特なコンテンツ」がもてはやされたというより、あくまでも「低価格でテレビでの放送に耐えうるコンテンツ」として、放送側が選択、放映したもので、今のように消費者が主体、あるいは現代のように放送する側が視聴者を調査して輸入されたものではない。まして全てが正規ルートで広がったわけではなかった。

しかし、こうした日本コンテンツの消費は結果的に日本コンテンツに対してリテラシーの高い人々を生むことになった。現在に至るまで日本のアニメ・漫画・ゲームを信奉する日本国外のファンを増やしたのは、日本のクリエイターにとってはうれしい誤算だったのではないだろうか。

海外コンテンツはもはや日本産と遜色ない

だが、日本の漫画・アニメファンがある程度確立した現在において、日本コンテンツをそのまま海外で垂れ流しているのは非常に危険である。日本のサブカルチャーファンを最も多く抱える国の一つである中国やアメリカでは、日本で人気になったコンテンツを自国に輸入する際の「デメリット」を負担に感じるあまり、「日本風」のコンテンツを自国で自作するという動きが出始めているのだ。

ニンジャスレイヤー』(アメリカ・Bradley Bond&Philip NinJ@ Morzez)や『RWBY』(アメリカ・ルースター・ティース・プロダクション)、あるいは『原神』(中国・mihoYo)、『アズールレーン』(中国・上海蛮啾&厦門勇仕)などが海外産の「日本風コンテンツ」の代表例といえる。

これらの日本風コンテンツでは、日本アニメを意識したイラストが採用され、それに合った日本人声優が起用されるのが一般的で、より力を入れたものでは日本人作曲家などを招いたりしている。これらはもはや「純日本」コンテンツと遜色ないところまで来ていると言える。

また、原神やアズールレーン、ドールズフロントライン等のように、企画段階から日本風イラスト、日本風ファンタジー、戦艦や銃器の擬人化を意識、強調した作品もある。

世界のアプリゲームの市場調査を行うセンサータワーによると、日本における中国産ゲームの市場規模は、2018年第1四半期で1億7000万ドルだったのが、2021年には9億ドルにまで急成長している。日本の人気ゲームアプリトップ100のうち、中国企業が開発したものは29もランクインしており、市場全体の25%を占めるまでになっている