調査概要/プレジデント編集部で、日本CHO協会に登録する人事関係者、人材会社関係者約1800人を対象に調査を実施。期間は2010年3月12~19日。有効回答者数は241人。回答者は各業種ごとに、業績などを基に選出した企業の中から1社とその理由を選択。さらに、各業種で選択した企業の中から最も働きがいのある企業1社を選択した。
二輪車メーカーとして創業したホンダは、四輪事業で成功し、最近は人型ロボットや飛行機事業へと挑戦の場を広げている。
なぜホンダにはいつまでもベンチャー企業のような挑戦の気風があるのだろうか。
OBの小林三郎・中央大学大学院客員教授によると、ホンダの“基本理念”は「三つの喜び」と「人間尊重」。社員のモチベーションを考えるとき大事なのは「人間尊重」のほうだ。小林氏がいう。
「一人ひとりを認めるということです。オヤジ(創業者の本田宗一郎)は『会社に無駄な奴は一人もいない』と断言しました。俺のころは優秀な人材はトヨタや日産にいっちゃうから、みんなB級、C級。それが分け隔てなく認めてもらえるから、俺みたいなアホが踊るわけです(笑)」
組織には花形ばかりではなく裏方も必要。希望しない働き方をしている人のモチベーションを保つにはどうすればいいか。苦労人の宗一郎が編み出したのが、この「人間尊重」の考え方だ。
小林氏によれば「オヤジと藤沢武夫さんが意気投合して会社をはじめるとき、『俺たちが世の中でされてきて嫌だったことは絶対に社員に味わわせないこと』を決めたそうです。オヤジは小学校、藤沢さんも中学校しか出ていないから嫌なことはいっぱいあったんだろうね」。
たとえばホンダの社内ではブルーカラーとホワイトカラーの区別をせず、現場に入るときは全員、白いツナギを着る。若き日の小林氏には「スポーツカーをつくりたかったのにエアバッグ担当にまわされた」という僻目があった。それを感じた宗一郎は、小林氏を見かけるたびに「安全をよろしく頼むな!」と声をかけたという。