「新しい上司はなぜいつも不機嫌なのか」背景を創作してみる

ステップ3は少しレベルが上がります。「視点移動」です。

視点移動は、相手がその行動や発言をした背景を、相手の立場に立って考える方法です。

「そんなことできるわけがないだろう」そう思うかもしれませんが大丈夫です。相手の立場に立つと言っても、あくまでも“あなたの創作”で構わないからです。

以前私のセミナーに参加された若い男性が、職場のリーダーにまつわるこんな話をしてくれたことがありました。

《かつてはいいリーダーに恵まれて、チームワークもとてもいい部署だったのですが、半年前にそのリーダーが異動してしまい、新しい上司がやってきたんです。

しかし、その上司はいつも不機嫌で、あいさつもしないし、チームで成果を出しても、「お疲れ様」とか「よくやったね」とか、なんの声がけもないし、笑いもしない。そのうち、だんだんとチームワークも悪くなっていって、ギクシャクした空気の部署になってしまったんです。このままでは成果も出せないし、何よりも僕自身が会社に行くのがつらくなってしまって、メンタルも病んでしまいそうだったので、辞める覚悟でその新しい上司に話をしました。「あいさつもしないですし、いつも不機嫌で、チームの雰囲気が本当に今よくない状況です。どうか、メンバーとコミュニケーションをもっととって、チームを盛り立ててくれないか」と。

するとその上司は、はっとした表情をして、「申し訳なかった」と頭を下げたんです。「じつは、妻がガンであることがわかって、まだ小学生のふたりの娘もいて、これから先、どうしたらいいのかと、ずっと考え続けていたんだ」と。

それを聴いて、逆に何も想像できていなかった自分が情けなくなって、「僕にできることがあれば何でも言ってください!」と伝えました。その後、上司はその話をチームにも共有してくれて、チーム全体で上司をサポートする意識が芽生えて、今はまたかつてのように職場がとてもいい雰囲気になったんです。》

人間の感情は、事情を知ることで変化する

いかがでしょうか。不機嫌であいさつもしなかった上司の過去の言動そのものは何も変わらないのに、背景が明るみになったことで、人間の感情や行動、発言までもが変化することを、この話は教えてくれています。

人間の感情は事情を知ることで変化する、ということなのです。

私たち人間は自分の感情の世界で生きる動物です。その感情によって思い込み、相手を良く評価したり悪く評価したりしています。