関係性がいいと、仕事も楽しくなる

「仕事なんだから、いい関係性なんて、必要ないよ」

企業などの組織では、そう言う人が結構いますね。

「自分がやることさえ、きちんとやっていればいい」

「まずは、作業をどう効率よく進め、どう結果を出せるかが重要だ」ということですよね。そういう傾向は、どこにでもあると思います。

組織に限らず、多くの人が「何かをしよう」というときに、どうしても後まわしにされがちなのが、人との関係性。ここで興味深いデータがあるので、見てみましょう。

【図表1】職場の人間関係の質とエンゲージメント
出典=The Economy of Wellbeing. Rath & Harter(2010)

これは、アメリカの従業員がどのくらい「働く喜び」を感じているかという研究結果をまとめたものです。

従業員が仕事に対して感じている「楽しさ」、すなわち充実感や就業意欲のことを「ワークエンゲージメント」と呼び、これが高まると、従業員の幸福度=ウェルビーイングも高まることがわかっています。

そこでグラフを見ると、「職場の関係性がよくない人」は、10%しか、「仕事が楽しい」と感じられていないのですね。

一方、「職場の関係性がよい人」は、49%と、ほぼ半数の人たちが仕事を楽しめているのです。この2つの差は、5倍近くあります。

そのくらい、職場の人間関係とワークエンゲージメントは、影響し合っているということです。

組織の従業員に対する取り組みは、時代とともに変わってきました。

もともとは顧客の満足度を上げることが目標で、従業員のことは二の次だったものが、従業員の「働きにくさ」を取り除くことに注目するようになり、それが「働きやすさ」を考える取り組みに変わりました。

批判、自己弁護…人間関係を壊す「4毒」の正体

では、心理的安全性のある関係性をつくるためにはどうすればいいでしょうか。必要なポイントを押さえていきましょう。

この関係性をつくるスキルには、次の2つがあります。

①「マイナス3から0のもの=悪い関係」を予防するもの
②「0からプラス3へ行くもの=よりよい関係」を促進するもの

①の最初のポイントは、人間の関係を壊す「4毒」を減らすこと。4毒とは、

・批判
・侮辱
・自己弁護
・逃避

のことで、まずはマイナス3の悪い関係性をつくらないように、この4つの行動を最小限にする努力をします。そのためにも、これらが起こりにくいガイドラインをつくり、場で共有します。

この4毒をつくらないためのガイドラインは、以下の4つです。

①相手自身を批判せずに、行動に注目する

この批判とは、「あなたは~だ」と、相手の人格・性格・能力を責めること。行動を責める不満とは違います。たとえば、時間に遅れてきた人に、

「なんて無責任なんだ」

と責めるのは批判(非難)ですが、

「時間どおりに始められなかったので、困ります」と行動に言及するのは、不満です。

批判の中でも、とくに気をつけたい言葉は、「いつも~だ」「いつも~してくれない」など。

「いつも」という言葉には「変わらず」という意味が含まれているので、自ずと人格批判になります。

性格や能力はすぐには変えられないため、そこを批判されると、人は無力感や焦燥感に陥りやすく、攻撃されていると感じて防衛的になります。

一方、行動は変えられるので、希望が持てます。相手を責めるのではなく、行動に注目し、やってほしいことを気持ちよくリクエストしていきましょう。