そのほかのEVメーカーもテスラ方式に舵を切っている

「ギガプレス」はテスラの専売特許ではない。

2030年までにすべての新車をEVにすると宣言したスウェーデンのボルボ社も、テスラと同様にギガプレスによる一体鋳造方式を採用する計画だ。次世代EVのために数年間で約1300億円を投じるボルボのトルスランダ工場にはギガプレスが導入され、次世代EVプラットフォームの製造に活用される。

ボルボのディーラー
写真=iStock.com/yujie chen
※写真はイメージです

さらに、中国の自動車メーカーでもギガプレスへの動きを見せている。

2014年に創業したNIO(上海蔚来汽車)だ。NIOは新興EVメーカーだが、自動運転開発にも力を入れていてシリコンバレーに開発センターを有し、先進運転支援システム「NIOパイロット」を搭載した車種も現在市販している。

そのNIOが型締力1万2000トンの超大型鋳造マシンを使ってEVの製造を行うようだ。テスラがモデルYで使っているギガプレスの型締力が6000トンだったのに対し、NIOが計画している超大型鋳造マシンは2倍の型締力になる。詳細はまだ判明していないが、ギガプレスが世界の自動車メーカーの生産方式の主流となるのか、注目が集まっている。

修理費用が従来よりも大幅に高くなるデメリットも

ギガプレスは自動車メーカーのものづくりを変えるのか? テスラファンやEV推進派はギガプレスを高く評価している。

一方で、ギガプレス懐疑派も多い。たとえば衝突事故になった時、アンダーボディのアルミ製鋳造品をすべて交換する必要があり、修理費用は従来より大幅に高くつく。損傷具合によっては廃車となる恐れも高い。それに対し、従来の鋼材と溶接の組み合わせなら、部分的な修理ができるので、修理費用は総じて安くなる。

では、その事態を自動車保険でカバーしてはどうか? 可能だろうが、クルマの保険代が値上がりするのではないか。

ここで少し立ち止まって考えてみよう。

新しいことを始めると、常にネガティブな意見は出てくるものだ。新しいことは100点満点ではない。起こりうる問題を事前にある程度想定しても、やってみなければわからないことのほうが多い。

すると、会議に次ぐ会議となる。泥をかぶりたくない上司や、責任を取りたくない経営陣の下では、リスクを嫌う圧力がのしかかり、議論は結局振り出しに戻って、従来の方法の維持に落ち着く。

こうして日本は失われた30年を過ごしてきたのではないか。