田中将大は本格派か技巧派か
マー君こと田中将大について、捕手出身の野村克也さんは「新人時代のマー君はスライダーがいいから使いたくなった。技巧派だ」と語った。一方、投手出身の江夏豊さんは「技巧派に見えるほど繊細なコントロールを武器にした、大胆かつ細心な本格派だ」と言う。
僕はマー君を、両方を兼ね備えた「パワーのある技巧派」と見ている。
菅野智之とタイプは一緒だ。それは数字が証明している。菅野の9イニング平均与四球は1.77個、平均奪三振は8.03個。マー君の9イニング平均与四球は1.82個、平均奪三振は8.39個だ。先述したように与四球が2.00以下だとかなりコントロールがよく、奪三振が8.00個以上だとかなり多い。
マー君の球種のなかで、打者にとって一番邪魔なのはスライダーとフォークだ。2種類の変化球の質がよすぎるのだ。だから投球に幅ができる。打者にとっては嫌な投手だ。さらにストレートを含め、すべての球種をコントロールよく操れるのも強みだ。
2021年、マー君は新人の佐藤輝明(阪神)にヒザ元のスライダーを本塁打にされた。帰国した同年、楽天で思うように勝ち星が伸びなかった。どうしたって2013年の「24勝0敗」のイメージで見てしまうのだ。
しかし、メジャーで6年連続2ケタ勝利をマークした「試合を作る技」はさすがだ。イニング数もしっかり稼いでいる。
メジャー経験をいかしてベース板の上で球を動かした黒田博樹(広島)、本格派から技巧派に転身して中日で6勝を挙げた松坂大輔のように、これまでの投球スタイルを見直していくことになるだろう。
2021年終了時点で、日米通算181勝90敗、勝率.668。これは通算180勝の斎藤雅樹さんの勝率.652をも上回っている。相変わらず負けない男である。
坂本勇人(巨人)と少年野球でバッテリーを組んでいた同級生だ。坂本は2020年に通算2000安打を達成した。マー君の通算200勝も射程圏に入っている。
大谷翔平が変えたメジャーの“あるルール”
大谷翔平が日本にいた2013年から16年までのセ・パ交流戦で対戦している。
2015年の大谷は、最多勝・最優秀防御率・最優秀勝率のタイトルに輝いた。
2016年は当時日本最速の165キロをマーク(21年に巨人・ビエイラが166キロで更新)。投打二刀流で日本一に貢献し、MVPに輝いた。
この2016年から投手と野手の両方でのベストナイン受賞が認められるようになった。1940年から77年間続く日本プロ野球のベストナイン表彰のルールを大谷が変えてしまったのだ。
メジャーでも1年目、2018年の「10登板・20本塁打・10盗塁」は史上初の快挙だった。2021年は権威あるメジャーのオールスターゲームに、本来ならありえない「1番DH・投手」で出場。日本でのベストナイン表彰に続き、メジャーのルールも変えてしまった。しかも、この「先発投手・DH兼任」は2022年シーズンから適用されるようになった。
2021年は9勝・46本塁打の大活躍で、メジャーでMVPを獲得した。ベーブ・ルースの1918年「13勝・11本塁打」、19年「9勝・29本塁打」以来、2人目の偉業なのである。