消費税増税関連法案が閣議決定された。消費税引き上げと同時に、所得税の最高税率を引き上げ、税制による所得の再分配機能を高めるとされるが、この“再分配”は誰のためなのだろうか。

1984年、米国の社会学者であるサムエル・プレストンは、同国で70年代から子どもの貧困増と教育支出が低下する一方で、年金や医療が手厚くなっていることを指摘。この現象について、子どもと高齢者はどちらも被扶養者でありながら、子どもの利益を代弁する「子を持つ親」よりも、高齢者の人口のほうが相対的に多いことと関係があるとし、その説は「プレストン効果」と呼ばれるようになった。

プレストン効果の最たる事例は日本の現状である。所得の再分配が政策として行われる際、日本では年金や医療がクローズアップされがちだ。しかし、厚生労働省の所得再分配調査を見ると、再分配後にもっとも等価所得が低いのは子ども世代。じつは日本の子どもの貧困率は14%で、OECD諸国の平均である12%を上回っているのである。消費税増税による税収も、大半は年金などに使われる予定だ。

高齢者より若い世代の有権者が少なくなれば、つまり少子高齢化が進めば進むほどこの状況は悪化する。一橋大学教授・青木玲子氏は「将来世代の利害が反映されるような制度にする必要がある」と指摘する。たとえば、選挙年齢の引き下げや子どもに投票権を与えて親が代わりに投票する方法(ドメイン投票方式)などが挙げられる。少子高齢化はこのままでは進む一方である。