売る側が優劣をつけず、あくまで客観的に違いを示し、「あとはお客様にどの商品が一番フィットするかです」と一歩引いてアプローチすることを、「客観比較法」と呼ぶが、そのテクニックとしてお勧めしたいのが、比較方法をアドバイスすることだ。
顧客は営業担当者に説得されることを嫌い、自分で納得して商品を選びたいと考えている。ただ一方では、どの商品も同じと考えているため、比較方法についてはそれほど詳しくない。そこでプロならここをチェックするというポイントを、第三者的にアドバイスするのだ。
たとえばマンションなら、「意外に知られていませんが、みなさんが入居後に気にするのがトイレの段差なのです」と専門家ならではの視点を教示するといいだろう。チェックポイントが自社商品の優位性に結びついていれば理想的だが、それをあからさまに匂わせるのは厳禁だ。大切なのは、顧客に比較検討の新たな材料を示すことにより、自分の過去の判断に疑念を抱かせ、再検討の必要性を感じさせることである。
この方法は高額商品ほど効果的だ。高額商品の場合、顧客はそれなりにデータを集めて比較検討し、購入を決めたはずだ。過去の自分の判断に自信を持っているからこそ、新たな視点を持ち込まれたときの揺らぎも大きい。顧客から「そういえば以前は、その点について考えたことがなかった」というセリフが出てきたら、このプロセスは成功だ。
(構成=村上 敬 撮影=鷹尾 茂)