専門性を特化させていく秘訣は、「選択と集中」にある。100の分野の本を1回ずつ読むより、1つの分野の本を100冊読む。さらに、100冊の本を1回ずつ読むより、1冊の本を100回読む。そうすることで、専門家になれる。

ところが、多くの人がひとつの分野の本に集中するだけでは不安だと考える。あれもしなきゃ、これもしなきゃ、と思ってしまう。それはすべての人のニーズに応えることと同じで、不可能なことなのだ。ドラッカーは、「会社とは、お客様から商品やサービスを買ってもらわないと成り立たない」と言っている。これは真理である。そしてお客様が何を欲しがるかは常に変わっていくものだから、「常にお客様に何が欲しいかと聞く事をしなさい」と言っている。このことは、時代が変わっても変わらない原則なのだ。

どんな大企業でも「ヒト・モノ・カネ・時間」には限界があり、すべてのニーズに応えることはできない。競合商品よりも魅力的な商品を提供できるビジネスだけを選択し、そこに「ヒト・モノ・カネ・時間」を集中させたほうが効果的なのだ。これがドラッカーの言う「選択と集中」である。

(構成=石井綾子 写真=PANA)