ストレスは長期化すると脳細胞が死滅してしまう
しかしながら、問題は、このストレスが長期的に続く場合です。
ストレスに立ち向かおうとする脳内物質は、先ほどご紹介したノルアドレナリンとステロイドホルモンの一種であるコルチゾールと呼ばれる、いわゆるストレスホルモンです。これは、全身を駆け巡り、さまざまな応答を引き起こして全力でストレスに対処しようとします。その結果、さまざまな身体的な不調が生じることになります。
特に厄介なのは、このコルチゾールが長期間作用するとどういうわけか脳細胞が死滅してしまうことです。そうすると、簡単には元には戻せない状態になってしまいます。
よく知られているストレス反応は、抑うつ状態というもので、気分がスッキリしない、朝起きられない、ネガティブな気分になるというものがあります。さらに、希死念慮、つまり自殺願望が伴うこともあります。これが数週間持続する場合には、うつ病と診断されることになるのです。
抑うつ状態で分泌が減っている脳内物質とは
抑うつ状態には、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど多くの脳内物質が関与していますが、特に、うつ病患者でセロトニンの分泌に変化が生じていることから、セロトニンをターゲットにした対症療法が主流になっています。
クリニックに行くと処方される抗うつ薬や抗不安薬の主成分は、本来は脳の中で過剰のセロトニンを吸収する過程である「再取り込み」を阻害する、SSRIという薬です。うつ病患者では、セロトニン分泌量が減っていることから、SSRIを服用することで、相対的にセロトニン量を増やそうという考え方に基づいています。
しかし、SSRIが効かないタイプのうつ病が存在することや、SSRIが効果を発揮するまでに数週間から数カ月かかることから、単にセロトニン量を増やせば良いというわけではないことがわかってきています。
現在では、セロトニンとは別の側面から、うつの根本的治療法について世界中の研究者が取り組んでいます。