なぜ真面目な女性経営者がホスト通いを始めたのか

私が今まで取材してきた中で、こういった「回答書」を用意してきた取材対象者というのは、名古屋市の河村たかし市長と、“日本最後の怪僧”との異名もある僧侶・池口恵観氏のみだ。しかも彼らの場合は、取材時間中、その回答書を読み上げ、「こちらで回答を用意しておいたから、その意向にしたがってほしい」という意図がありありとうかがえた。

だが、いちごチェリーさんの場合はそうではなく、まず、初対面の私に、「自分はこういう風に考えている」ことを伝え、お互いのコミュニケーションを円滑にしようという「気配り」で作成されたものだ。そもそも、初めて取材を受けるという人で回答書を準備してきたのは、彼女が初めてだ。彼女のこの行動からは「真面目さ」と「真摯な性格」、そして同時に「手回しのよさ」を感じた。

いちごチェリーさんは既婚者かつ自分の会社を持つ女性経営者だ。会社は夫との共同名義だが、代表はいちごチェリーさんが務めている。夫婦に子供はいない。そういった事情もあってか、彼女は「ホス狂い」を自称できるほど、自分の自由になるお金があるようだった。取材当時はホストクラブに通い始めて、まだ5カ月ほど。最初のホストクラブとの出会いも、また、ツイッターだった。

新人ホストを初指名し「特別な存在」に

「当時SNSで、世間話をするようなグループがあって、そこで咲夜くん(仮名)という大学生の男の子と仲良くなったんです。やりとりをしているうちに、『実はアルバイトで歌舞伎町でホストをしているんです。まだ指名がなくて……』と、打ち明けられて、じゃあ、行ってあげるよ、となりました。それが、ホストクラブに通うようになったきっかけですね」

会社を経営する前は、観光やブライダルなどサービス業の専門学校で教職についていたといういちごチェリーさんは、教え子たちが経営する居酒屋やレストランなどを応援するために、店に顔を出すということは当たり前のことだった。だから「夜の店」に足を踏み入れることに抵抗はなかったという。

「最初は、義理で1回だけ行こうくらいの感覚だったんですけど、行ってみたら面白かった。歌舞伎町でも、そこそこ有名なグループの店だったので、先輩ホストたちも、話や盛り上げ方が上手なんです。咲夜くんに『ホストにとって、初めての指名客って、一生忘れられない、特別な存在なんだよ』と言われ、お店の先輩ホストたちにも、『咲夜を宜しく』と頼まれ、そこまで特別って言ってくれるなら……って、2回、3回と通うようになりました」