ダボスの世界経済フォーラム年次総会を見ればわかる
ダボスマンや、彼らのお抱えの戦力、例えばロビイスト、シンクタンク、あるいは広報コンサルタントの一団、それから真実よりも権力にお近づきになりたいタイプのジャーナリストたちは、現実が示す反証にもかかわらず、こうした思想は永遠に続くという見解を譲ろうとしない。
私の役目は、読者がダボスマンを種族として理解するのを手助けすることだ。「彼」は、特異な性質を持ち、何のためらいもなく攻撃する肉食獣のような存在で、常に自分の領域を広げ、他者から栄養を吸い取ろうと狙っている。にもかかわらず、誰にとっても“友人代表”として振る舞うことで、反撃を受けないよう防御している。
この特色がどこよりも生き生きとした形でみられるのが、ダボスでの世界経済フォーラム年次総会である。
形式上は、世界経済フォーラムは、現代のさまざまな課題にまじめに取り組むための、数日間にわたるセミナーだ。そこでは、気候変動、ジェンダー間の不平等や、デジタル化の将来などが真摯に討議される。フォーラムは高尚な責務をあまねく知らしめようと、いかにも骨太に「世界の現状を改善する」と掲げている。その言葉は、街灯に吊り下げられた垂れ幕や、会場内のあらゆる部屋にキャッチコピーとして掲げられ、権力のおこぼれとしてメディア取材陣へ配られる記念品のパソコンバッグにまで刻まれている。
「彼らが世界全体のルールを作る」
このお題目に、フォーラムの活動全体にひそむ矛盾が露呈している。2020年総会の参加者たちの資産合計は、5000億ドルに達すると見積もられる。アルプスの山あいに集った人々は、どうみても、この世界の究極的な勝者なのだ。彼らの途方もない富やブランド力、社会的地位は、既存の経済システムと表裏一体になっているので、変化を期待させるような表現をちりばめた改善の約束も、実際のところは疑わしいものである。
舞台裏では、このフォーラムは、ビジネス上の契約や戦略的なネットワーク作りのための場と化している。金融最大手やコンサル企業お抱えの“雑談の祭典”ともいえるし、出席者にとってみれば、分断された人類の“勝ち組”に入れたということを互いに祝福し合う機会なのだ。
「それこそがダボスの魔法だ」と、かつてフォーラム運営に携わったある経営者は私に語った。「これは地球上で最大のロビー活動の場なんだ。最も力のある人々が、外部への説明責任など負わずに、閉ざされたドアの内側に集う。そしてその場で、彼らが世界全体のルールを作る」