相互理解のための対話で「推論のはしご」を共有する

人は1人ひとり価値観も違い、それぞれ違う意見を持ち、正解も人によって異なります。だからこそ、相互理解のためのコミュニケーション=「対話(ダイアローグ)」が不可欠です。しかも、新しい業務に取りかかる際には、まず業務の背景や目標・目的、判断基準などを共有するための「対話」が欠かせません。

対話において大切なのは、単に何を考えているかを話し合うだけでなく、なぜそのように考えているのかという思考のプロセスである「推論のはしご」を共有することです。

「推論のはしご」のわかりやすい例を挙げます。2組の夫婦が、ほぼ同時に同じ場所に引っ越してきました。それぞれの夫婦がふと窓から外を見ると、道端で近所の奥さんたちが井戸端会議をしています。

【Aさん夫婦の会話】
「ちょっと見て。あの体格のいい人がこのあたりを仕切っているみたいだね」
「ということは、あの人にうちのことを知られると、あることないこと言いふらされるかもしれないから、あの人と付き合うのは慎重にしたほうがいいわね」
「たしかにそうだね。噂話のネタにされるのは嫌だし、尾ひれがついて広がると怖いからね」

【Aさん夫婦の結論】
仕切っている体格のいい人とは慎重に付き合う。積極的には関わらない。


【Bさん夫婦の会話】
「ちょっと見て。あの体格のいい人がこのあたりを仕切っているみたいだね」
「本当だ。ということは、娘をどこの塾に通わせるといいかなど、ご近所の情報を一番持っているのかもしれないわね」
「そうだね。あの人に相談に行くのが早くて確実そうだから、早速明日、菓子折りでも持って挨拶に行ってみようか」
「そうね。賛成。そうしましょう」

【Bさん夫婦の結論】
仕切っている体格のいい人と積極的に付き合う。

プロセスの共有によって創造性が発揮される

このように、同じ事実や事象を見ても、どうとらえたか、何に着目したか、どのように考えたかで結論は大きく異なります。だからこそ、対話のなかでは、お互いの考えたプロセスを「聴き合う」ことが大切になるのです。

そうすることによって、「意見が合わない」と思っていた相手でも、その考えに共感できたり、より深い理解につながったりします。そして、対話が刺激となり、当初なかった新しいアイデアや物の見方が生まれるなど、創造性が発揮されるのです。

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