日本政府は2030年までに公共用急速充電器を3万基に増やす目標を掲げている(現在は8000弱にとどまる)。本体だけで100万円超となるため、設置費用を含めた導入コストは大きく、設置した事業者が投資額を回収するまでに時間を要する難点がある。
電池の劣化、下取りで不利になる…
3つ目の壁は「電池の劣化」。自動車を乗り換える場合、現在の車を下取りに出し、購入費の一部を補塡するのが一般的だ。しかし、電池の劣化のリスクがあるEVは、下取価格が安くなる傾向がある。
EVの日産・リーフと、ハイブリット車のトヨタ・プリウスを比較してみよう。下取りに出す時の価格(残価)はEVのほうが低い。2019年式の残価率はリーフが45.8~53.6%、プリウスは66.7~70%。2018年式はリーフが39.7%、プリウスはが7.4~60.1%に低下する。
このようにEV普及には解決すべき問題はまだまだ残っており、日本だけでなくEV先進国であるヨーロッパや中国も例外なく当てはまっている。EV先進国の多くは、こうしたEVが抱える未解決の問題をある種、棚上げしてもゲームチェンジを仕掛けてきているのである。
だからこそ、この未解決の問題をクリアしていく事が本質的なEVシフトの実現、かつ、世界にもう一度、日本車の存在感を示すことにつながるのではないか。そのヒントになるのが、「交換式バッテリー」という新しいモデルである。
「交換式バッテリー」という解決策
通常のEVは、車載の中に蓄電池が搭載されており、充電器よりプラグを差し込んで充電する。取り外しは専門業者でなければ不可能である。
一方、交換式バッテリーであれば、街中に設置されているバッテリーステーションで使用して容量の減ったバッテリーと、ステーションで用意されている満充電のバッテリーを交換できる。
この仕組みにより、利用者はいつでも満充電されたバッテリーを待ち時間ゼロで使用でき、航続距離を気にする必要が無くなる。またEV車体と蓄電池を切り離すことで、下取価格の低下を抑制することにも寄与できる。
その一方、EVの交換式バッテリーには課題もある。
一番は「コスト」である。
一般的な乗用車のEVに搭載される蓄電池重量は200kg~300kgにもなり、当然、ユーザーが自分で交換することはできない。そのため、全自動のバッテリーステーションの設置が必要になるが、設備投資のコストが大きい。
また、そもそも市場に投下する車両本体よりもバッテリーの数が多くなければ交換式が成り立たないので、結果として蓄電池の製造コストも高くなる。投資コストを回収するためには、各メーカーが製造するEV用蓄電池を共通規格とし、市場ボリュームを大きくすることが重要だが現在の競争環境の中では難しい状況である。