なぜ日本の自動車メーカーは出遅れたのか
ヨーロッパや中国などの「EV先進国」と日本を比較すると、決定的に異なるのは行政側からのEVシフトへの投資である。例えば、ヨーロッパでは既に国からの補助政策によってガソリン車を購入するよりも、EVの方が安くなっている状況である。
また、補助政策によってEV購入のハードルを下げるだけではなく、国によってはEV専用の高速レーンや駐車場の設置などさまざまなメリットを作り上げ、EV市場の拡大に注力しており、この動きは中国でも同様である。
これらの動きの背景にあるのは、対日本車、特にハイブリッド車への競争戦略と考える。日本のハイブリッド車の品質は非常に高く、他国の追随を許さない状況となっており、だからこそカーボンニュートラルという錦の御旗の下にゲームチェンジを仕掛けているのが現在のEV先進国の状況ではないだろうか。
その一方で日本では、ハイブリッド車に強い各自動車メーカーとベース電源の多くを火力発動に頼っている電力構成の中で、行政側のドラスティックな改革が進んでいないのが、EVシフトの遅れをもたらしていると考える。
EVが普及するための絶対条件
しかしながら、本当にEVが自動車市場のマジョリティーになり得る日が来るのだろうか。EVシフトが加速している状況ではあるが、2020年のEUと英国の新車販売台数におけるEVの割合は約5.6%。中国は4.4%、アメリカは1.8%ほど。日本は0.6%にとどまっている。
筆者はEVにはいまだに議論が不十分な未解決の問題が散見され、その解決無くして、EVが自動車のメインになることはないと考える。EVシフトがさらに進むには、越えなければならない「3つの壁」がある。それは、①航続距離、②充電時間、③電池の劣化、である。
1つ目の壁は「航続距離」。EV用の蓄電池は日進月歩で技術革新が進んでいるものの、現状ではEVの実質エネルギー搭載量はガソリン車の3分の1程度にとどまっている。特に冬場の走行は電力を大幅に使用してしまうため、表面上の航続距離よりも実質の航続距離が短くなる。
2つ目の壁は「充電時間」。経済産業省のまとめによると、急速充電でも航続距離80kmで約15分、160kmで約30分を要する。ガソリン車の場合、ガソリンスタンドでの給油が2~3分で済むことを考えると、この時間差は大きい。
深夜の時間帯に自宅で充電すれば、普通充電で問題ない。だが、現在の航続距離では外出先で急速充電が必要となるケースも出てくるだろう。EV普及には急速充電のインフラ(充電ステーション等)を整える必要があるが大きな投資が必要となる。