哺乳類や鳥類が少し長い寿命を手に入れた理由
夏の間、あんなにうるさく鳴いていたセミたちも、卵を産むと次々に死んでしまう。
あんなに力強く川を遡っていたサケたちも、卵を産み、子孫を残すと力尽きて死んでしまう。
多くの生物は、卵を産み落とすと、その生涯を閉じる。新しい世代を残したら、古い世代は去っていくというのが、生物の世界の掟なのである。
しかし、哺乳類は違う。
哺乳類は次の世代を産んでも、「子どもを育てる」という大切な仕事が残されている。そのため、哺乳類は子どもを産んでも死ぬことはなく、生き続ける。
そして、子どもを保護しながら、子どもにたくさんの経験と知識を与えなければならないのだ。それが「知能」を選択した哺乳類の戦略である。
こうして、哺乳類は、「子育て」という、少しだけ長い寿命を手に入れたのである。
そういえば、鳥類も子育てをする。卵を産んでも「ひなを育てる」という大切な仕事が残されている。
鳥類や哺乳類が「老いること」ができるのは、子育てをすることと無関係ではないのだ。
人間はとにかく覚えることが多い
人類は他の動物とは大きく異なる進化を遂げ、文明を切り拓いた。
二足歩行をすることも、人類を発展させただろう。火を使うことも、人類を発展させただろう。言葉を操ることも、人類を発展させただろう。
ところが、驚くべきことに……、じつは「おばあちゃんがいる」ということも、人類を発展させたと言われている。
これはいったい、どういうことなのだろう。
子育てをするとは言っても、多くの哺乳類が1年くらいで子育てを終える。長くても、せいぜい数年程度である。
これに対して、人間は育児期間がとても長い。
現在では、成人になるのに18年。もっとも成人した後も親のすねをかじっている場合も珍しくない。
昔は、10歳を超えると元服したとか、結婚したとか言う。今と比べればとても早いと感じるが、それでも10年以上も子育てをしていることになる。これは、哺乳類の中でも飛び抜けて長い。
人間はとにかく覚えることが多い。そのため、子ども時代が長くなるように進化してきたと言われている。そして、長い子ども時代を支えるように、人間は子育てのための寿命を延ばしてきたのである。
それだけではない。生物の歴史の中で、ついに、これまで存在しなかった「おばあちゃん」が登場したのである。