人生のクライマックスはずっと先

このとんでもない男の生涯から、僕たちは何を読み取ることができるでしょうか。

彼の生涯に社会の変化が大きな影響を与えている点は見逃せません。ガスランプ事業の失敗も、ガソリンスタンドの(一時的な)成功も、サンダースカフェの失敗も、いずれも社会環境の変化が原因でした。サンダースほどの人間でも、環境の変化には勝てなかったのです。

しかし彼はあきらめず、ひたすらトライ&エラーを続けます。

するとあるとき、ふと、今までの人生で張ってきた伏線が一気に回収され、幼少時からなじんできた料理がきっかけとなって、人生がクライマックスを迎える。彼の場合、それは65歳を過ぎてからのことでした。

セルビアのベオグラードの街角にある、カーネル・サンダースがシンボルのKFCの看板の前を行き交う人々。KFCは、フライドチキンを専門とするアメリカのファストフードレストランチェーンで、世界第2位のレストランチェーン
写真=iStock.com/BalkansCat
※写真はイメージです

僕はいつも思うのですが、30代や40代くらいで「成功した」「失敗した」と言うのはやめましょう。不毛です。そもそも何をもって成功というのか難しいですし、それは別にしても、せめて80歳くらいまでは待ちましょう。人生、何がどうなるかなんて分かりません。

深井龍之介『歴史思考』(ダイヤモンド社)
深井龍之介『歴史思考』(ダイヤモンド社)

サンダースに限らず、歴史上の偉人は多くが遅咲きです。ガンディーや孔子のことを思い出してください。彼らも遅咲きでした。それだけではありません。劉邦も、桓武天皇も、伊能忠敬も、ヘンリー・フォードも、ネルソン・マンデラも、シルヴェスター・スタローンも、みな遅咲きです。

なぜ偉人は遅咲きが多いのでしょうか? 理由の一つは、人は歳を取るほどしょぼくれていくように思われがちですが、実際は逆にどんどん可能性が広がり、加速していくからではないでしょうか。

だから、まだ若いうちから絶望したり有頂天になるのはやめましょう。

あなたの人生はまだ、ちまちまと伏線を張っている段階にすぎません。クライマックスはまだまだ、ずっと先なんです。

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