※本稿は、深作秀春『緑内障の真実』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
緑内障の原因は本当に“眼圧”だけなのか
まずは、緑内障の正体について考えましょう。
正直に言えば、答えはまだ分かっていません。「そんなことはないだろう、いつも“眼圧が高いから”などと言われ、多くの薬を出されていたのに」という声が聞こえてきそうです。
そうですね、私も眼科医として最初に緑内障を勉強したときには、常に目の圧である眼圧を測定して、治療効果があったかどうかを判断していました。以前から現在に至るまで、「緑内障とは、眼圧が上昇するため、視野や視力に異常の起こる病気である」と信じられてきています。
そもそも“目安の数値”が日本人に合わせたものではない
長い経験で分かってきたことは、眼圧が高いと、視神経という「見るための脳神経」が障害される傾向があるのは間違いないということです。ただ、患者それぞれに、どの程度の眼圧なら視神経の障害を止められるかは、非常に難しい課題なのです。
また目安としての正常眼圧の概念は、戦後すぐの頃に、ドイツで提唱されました。眼圧の測り方としては、重りで目を押して「角膜の歪み」を測る方法で測定されました。この際に、目の見え方が正常な方の歪みを測定して、「正常眼圧」とされたのです。ちなみに正常眼圧は、10mmHgから20mmHgとされています。
ですから、眼科外来にかかると、眼圧計で目の圧を測られて、高いか低いかを必ず見られます。でも、「はじめに」でも述べたように、この正常眼圧は、角膜の厚みが600ミクロンほどのドイツ人で眼圧測定をして求められた値です。一方で、日本人の角膜は550ミクロンほどと薄いため、日本人の眼圧は低く測られます。500ミクロン以下と、さらに薄い角膜の方もいます。
そうなると、角膜の厚みに合わせた眼圧測定値の補正が必要です。薄い角膜の場合には、測定値に値をプラスします。換算表では角膜厚に応じて、445ミクロンでプラス7mmHg、490ミクロンでプラス4mmHg、515ミクロンでプラス2mmHgなどと換算されます。つまり、角膜の薄い日本人にとっての「正常眼圧」は、もっと低くあるべきことが分かります。