遊具もベンチもない不自然に空っぽの公園
ここでは座面が正方形と円形の2種類を確認したが、いずれも平らで硬く、座り心地も悪い。かつては普通のベンチが存在したが、スツール・タイプに置き換えたのではないかと思われる。ただ、ここのトイレは使っていたかもしれない。公園に隣接するバス停はそもそも座る場所がなかった。しかし、公園に行く途中にあったバス停には、おそらく手作りの木製ベンチが置かれている。背もたれやアームはないが、仕切りはないので、一応、寝そべることは可能だ。
もうひとつ現場からすぐ歩いて行けるところとしては、甲州街道の南側のエリアに初台の近くまで緑道のように続く、細長い公園がある。ときどき横断する道路によって切断されているが、「渋谷区立 幡ヶ谷駅前公園」や「渋谷区立 西原一丁目公園」などの看板が掲げられていた。
しかし、ここにもいわゆるベンチがない。ときどき前述した円形のスツール・タイプが点々と並ぶだけだ(画像3、六角形パターンもあり)。また途中で広くなる場所もあるのだが、遊具やベンチがなく、不自然に空っぽの公園だった(住宅が隣接するため、クレームによってベンチなどを撤去したのかもしれない)。
雨露を防げるバス停の小さなベンチを居場所にした
だいぶ歩いて、ようやくベンチを発見したが、後付けの仕切りが入っている。そして遊具が集中し、子どもで賑わう場所の横にホームレスと思われる人物が座っていた。車止めの低い円柱と同じものが、スツール・タイプのように使われているケースも認められた。
すなわち、バス停の周辺にまったく居場所がないわけではなかった。が、ホームレスの視点から観察すると、決してやさしくはない環境である。では、なぜバス停を選んだのか。おそらく、雨露をしのぐことができる屋根も付いていたことが、理由のひとつだろう。また公園は照明が少なく、夜は暗くなってしまう。一方で交通量が多い甲州街道沿いの大通りは、街灯が存在し、女性にとって安心な場所だったのかもしれない。実際、バスの運行が終わる夜になると、居場所として使っていたようだ。