ただでさえ小さいのに、間には仕切りが付いている
事件が起きたのは、甲州街道沿いの幡ヶ谷原町のバス停である。ただし、西に向かう1番のりばはスタンドのみで、当然そこではない。道路の反対側にある2番のりばが、ベンチと一体化したバス停で、ひっそりと花が添えてあった(画像1)。
これは実は規格品であり、バスに乗って現地に向かう途中にも、同じタイプのバス停をいくつか見かけた。現物を見て驚いたのが、想像以上にベンチが小さいことである。奥行きはわずか20センチ程度、長さは90センチ以下だ。成人の肩幅は40センチ以上あり、寝返りを考慮すると、最低+30センチがベッドには必要だと言われている。これでは仕切りがなかったとしても、うまく寝ることができない。子どもでも難しいだろう。4歳児で平均身長は100センチを超えるからだ。
とすれば、別に仕切りがなくても、寝そべる行為を妨害できるのに、念を押したのか、あるいはホームレスには伝わる拒否のメッセージとして、わざわざ仕切りを付加したのかもしれない。過剰な排除ベンチである。かといって、この小さいベンチは座るにしても、浅く腰をかけることができる程度だ。快適な座面の奥行きとしては、40センチ以上は欲しい。
普通の利用者にとっても座りにくいデザイン
鉄骨のフレームで構成されたバス停のデザインをよく見ると、このベンチは横幅を倍以上の長さに伸ばすこともできる。ただ、その背後に広告のポスターを入れるフレームがあり、人が座っても、広告を邪魔しないところまでしかベンチがないのだ。このバス停は屋根付きで、十分な屋根の広さから考えると、もっとベンチの奥行きは増やせるはずだが、それを選択していない。つまり、普通の利用者にとっても座りにくくデザインされている。
被害者になった女性は、ほかに居場所を見つけることができなかったのか。
疑問に思い、地図で調べて、一番近くの幡ヶ谷第一公園に行くと、2つの排除ベンチがあった(画像2)。
幡ヶ谷第三公園の入り口にも、仕切り付きのベンチが2つ存在する。いずれも明らかに不自然な造形なので、第一公園と同様、当初は普通のベンチだったものに後から足した仕切りだ。また第三公園の内部にはなんとベンチがひとつもない。代わりに背もたれやアーム(ひじかけ)がない、スツール・タイプを相互に離しながら、3つ並べて置いている。したがって、無理に寝ることはできなくはないが、相当身体に負担がかかり、休まることはないだろう。