東京の日射量は年間を通して安定しており太陽光発電に最適
疑問7:東京はアメリカやヨーロッパと比べて晴れの日が多くない。単純比較をするんじゃない!
海外では、アメリカのカリフォルニア州を先頭に、ニューヨーク市やドイツで太陽光の義務化が進んでいます。東京はこうした太陽光義務化の先輩都市に比べて、日射に恵まれていないから不利なのでしょうか?
それでは、米エネルギー省が公開している世界の気象データに基づいて、カリフォルニア(ナパ)・ニューヨーク・東京・ベルリンの日射量(南正対・傾斜角30度の屋根面を想定)を「単純」に比較してみましょう(図表10)。
さすがにカリフォルニアは、春~夏の日射量が非常に多く、年間平均でもトップです。ただし、秋~冬には日射が大きく落ち込んでしまうのがウィークポイント。
一方、肝心の東京は年間平均では2位のニューヨークに次いで僅差の3位ですが、冬も含めて通年で安定した日射が得られます。この東京など日本の太平洋側の「晴れの日が多い」気候は、実は太陽エネルギー利用に非常に有利です。
特に、エネルギー需要が一番多い冬に、しっかり発電してくれるのは好都合。前述のように、売電ではなく自家消費優先の屋根載せが今後のメインになる中で、どの季節でも自分で発電分を使いきれるくらいの「ほどほどサイズ」の太陽光を載せるには、通年で安定した日射がある方が有利。東京の日射は、自家消費優先の屋根載せに最適なのです。
それにしても、気の毒になるのはベルリンの日射量の弱さ。通年でも断トツでビリですが、特に冬の落ち込みは目も当てられないほど。これほどプアな日射にもかかわらず、背に腹は代えられないとドイツはがんばって義務化を進めているのです。彼らはどれほど、東京の冬の恵まれた日射をうらやんでいることでしょう! さすが、日本は「日の本の国」。恵まれた太陽エネルギーを活用しなければバチが当たるというものです。
太陽光の発電実績は都の想定を上回っている
疑問8:太陽光のコスパ試算が胡散臭い。本当にちゃんと発電するのか?
前稿のように、東京都の試算では太陽光発電の設置コストは10年で回収、補助金込みだと6年で回収とされています。とはいえ、これはあくまで試算。本当に東京都の試算前提のように発電するのでしょうか?
日本中のゼロエネルギー住宅(ZEH)に載せた太陽光が、容量1kWあたり年間でどれだけ発電したか。その実績値を経産省が公開しています(注6)。それによると、東京での実績は全国では中程度の1125kWh/年。東京都の想定している1000kWh/年を1割以上も上回っています。東京でも太陽光はしっかり発電しているのです。
注6:「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 調査発表会2021」
太陽光のコスパ計算で他に重要となるのは、売電と自家消費の割合。売電単価が安くなる一方で買電単価は急上昇しているため、なるべく売電ではなく自家消費を増やす工夫は重要です。
さらに、太陽光の設置コストも重要なのは当然です。近年ではだいぶ安くなっていますが、設置義務化に伴う住宅業者の競争により、さらなるコストダウンが期待できます。東京より日射が豊富な地域はたくさんあります。東京から日本中に、電気代も安心な住まいが普及していくことが期待されます。