外国人観光客の受け入れが2年2カ月ぶりに再開された。旅行会社や航空会社、宿泊施設、土産物店など、関連業界の期待は高まる。しかし、訪日観光復活への道のりは険しいと言わざるを得ない。入国者数が1日当たり2万人に制限されていることだけでなく、日本のインバウンド観光の構造が外国人旅行者の回復を遅らせる可能性が高いからだ。

空港
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いま、訪日観光でもっとも期待されているのはお隣の韓国からの旅行者だ。韓国大手旅行会社「ハナツアー」の日本支社にたずねると、最近、訪日パッケージツアーの申し込みが殺到しているという。

久しぶりに客足が伸び、大忙しの担当者は嬉しい悲鳴をあげている――と思いきや、予想外の返事に言葉が詰まった。

「日本の外国人観光客受け入れガイドラインと韓国政府の方針が絡み合って、どこの旅行会社も大パニックになっていると思います」(ツアー企画担当者)

さらに、「いま集まっているお客様の半数以上は、たぶんキャンセルになるのでは」と、不安の声を漏らした。いったい、何が起こっているのか?

これまでハナツアーは日本政府が訪日観光についての防疫基準を発表する前からツアー商品を販売してきた。担当者はこう続ける。

「要するに水際対策の緩和を予想して商品をつくり、『日本の防疫基準が確認できた時点で日程や料金が変わる可能性があります』としたうえで、ツアーを販売してきたんです」

観光庁がガイドラインを発表したのは6月7日。そこにはさまざまな条件が記載されている。

「ガイドラインに沿って、いま商品を全部つくり直している最中です。でも、ガイドラインにはまだ曖昧なところも多くて、正確な日程表や料金を出せません」

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混乱に拍車をかけているのが厚生労働省の入国者健康管理システム(ERFS)だ。

「韓国の旅行者が日本の観光ビザを申し込むには現地の旅行会社であるわれわれがERFSに申請して、IDを発行してもらう必要があります。それを入国予定者に渡すことでビザを申請できる。ところが、ERFSは6月10日にならないと可動しません。システムについて、案内はされたのですが、それがどのようなものなのか、正確にはわかりません」