表面上は穏やかな現代の「嫁姑問題」
姑が嫁をいびる、いわゆる「嫁姑問題」で熱い会話が繰り広げられたのは過去のこと。今どきの義母は、息子の妻に対しても気を使う時代。仕事を持ちながら家事や子育てに奮闘しつつ、自分磨きにも手を抜かない息子の妻に対し、ひとたび義母が文句をつけようものなら、たちまち息子からクレームが入るからだ。「息子に嫌われたくないから」と、言いたいことを胸にしまったまま我慢を重ねている義母のエピソードも枚挙にいとまがない。
一方で、「無神経な義母の一言に傷ついた」という妻側の訴えが減っているかというと、じつはその反対。私自身が受ける相談案件を見ても、確実に増えている印象がある。つまり、一見表面上は穏やかな関係を保っているように見えても、心の内ではお互いに消えることのない不満を抱えているのが、現代の「嫁姑問題」の実態といえる。
そんな溜まりに溜まった妻の不満が、義母の「たった一言」によって爆発した場合、離婚の危機にも直面することもある。たとえば、次のようなケースだ。
※プライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
「やっぱり男の子を生んでこそ一人前ね」
【CASE1】「男の孫」を欲しがる義母
結婚4年目のEさん(35歳)は、1歳年上の夫と2年以上にわたる不妊治療の末、待望の第1子となる女児を妊娠、昨年出産した。「生まれた瞬間、腕のなかの小さな我が子が愛しくて、夫も私も声を上げて泣くほどうれしかった」。
その日以降、目の中に入れても痛くない娘として夫婦で育ててきたが、子供が2歳になる頃からEさんは義母の存在にストレスを感じるようになった。「夫の実家は昔から続く家業を営んでいる。現在、長男の夫は4代目。5代目には、私たち夫婦の息子を望んでいることをあからさまにアピールしてくるようになった」。
「あなたの年齢的にも、早くもうひとり生まないと時間切れになるわよ」「せめて弟か妹をつくってあげないと、ひとりっ子だとかわいそう」といった調子で、Eさんに容赦なくプレッシャーをかける義母への不満を夫にぶつけるたびに、夫婦関係は悪化していったという。「『おふくろは嫌味じゃなく、本気で心配してくれているのに、そんなふうに悪く受け取るお前のほうがどうかしている』などと、あくまでも義母の肩を持つ夫に腹が立って仕方がなくなった」。
Eさんが、「もう限界」と感じたのは、義母による夫の弟夫婦と比べる発言がひどくなってからとのこと。「次男の嫁は、男の子を2人も生んで偉いわ」「やっぱり男の子を生んでこそ一人前ね」といってEさんと顔を合わせるたびに、義母は夫の弟夫婦のことをほめちぎるのだという。男の孫を欲しがる義母と、妻の気持ちに寄り添おうとしない夫に、「心底、嫌気がさした」というEさん。
現在も、「2人目の子どもの妊活を」と迫り続ける義母とは裏腹に、Eさんは「娘をつれて実家に戻ることを検討中」だと話す。