れいわ新選組の山本太郎代表が衆院議員を辞職し、今夏の参院選への出馬を発表した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「党の戦略として衆院議員をわずか半年で辞職するのは選挙の私物化に他ならない。その様子を面白おかしく報じるマスコミの罪も重い」という――。
記者会見を終え、櫛渕万里氏(右)に議員バッジを手渡し撮影に応じる、れいわ新選組の山本太郎代表=2022年4月15日、東京・永田町の衆院議員会館
写真=時事通信フォト
記者会見を終え、櫛渕万里氏(右)に議員バッジを手渡し撮影に応じる、れいわ新選組の山本太郎代表=2022年4月15日、東京・永田町の衆院議員会館

選挙をゲームのようにもてあそぶ山本太郎代表

衆院議員を辞職して夏の参院選への出馬を表明していたれいわ新選組の山本太郎代表が、5月20日の記者会見で、ようやく東京選挙区(改選数6)からの出馬を表明した。4月15日の突然の辞職表明から1カ月余り。結局は何のことはない、改選数が多く、自身も出馬の経験がある東京に落ち着いた。

議席を自分の私物のように扱って平気な山本氏にもあきれているが、それ以上にため息が出るのは、この間のメディアの報道ぶりだ。全国紙を含む多くのメディアが、当選から半年足らずで貴重な議席を投げ出した山本氏を批判するのでもいさめるのでもなく「山本太郎はどこから出る?」「与野党戦々恐々」などとあおり続けた。

私たちはいい加減気づくべきではないのか。選挙を単なるゲームのようにもてあそぶ政治家を、面白がってもてはやして「時代の寵児」のようにのさばらせてきたメディアこそが、日本の政治の質を大きく下げてしまったことを。

今さらではあるが、山本氏の辞職について簡単に述べておきたい。

くら替え出馬自体は確かに、過去にも全くなかったわけではない。しかし、山本氏が昨秋の衆院選で当選してから辞職するまでの期間は、わずか半年足らず。それも国会の会期中である。辞職時点で、通常国会の会期はまだ約2カ月もあった。民意によって貴重な議席を得た山本氏が、国会で真摯しんしに取り組むべき課題は、内政、外交ともに山ほどあったはずだ。

「予算委員会に席を持てない」は辞職の理由にならない

山本氏は辞職会見で「任期を全うするかしないか、ってことを最初に考えて選挙には出ませんね。当然、全うするんだろうということが前提だと思います。でも、それはその時の状況によって変わるもんだろう、ということだと思います」と述べていたが、あんまりだろう。

辞職の理由について山本氏は「(小政党のため)予算委員会に席を持てない」ことを挙げた。しかし、考えてもみてほしい。れいわが予算委員会に席を持てなかったのは、直近の選挙結果、つまり民意によるものだ。確かに現行の小選挙区制中心の選挙制度が小政党に不利なのは理解するが、それでも立法府の人間であれば、まずはその現実を一度は受け入れなければ始まらない。

れいわが予算委員会に席を持ちたいなら、まず衆院選で当選した山本氏を含む3人と参院議員2人の計5人のチームで、国会でしっかりと仕事をすべきだった。その仕事ぶりを有権者に認めてもらい、政党として信頼を勝ち得た上で、次の衆院選で「さらにれいわの議席を増やしたい」と思ってもらうべきだったのだ。それが「政治の王道」である。