お金を重視せずに仕事を選べるのはリタイア世代の特権
臨床心理士になるには、大学院を卒業後、合格率6割程度の試験に合格して資格を取得する必要があります。資格取得のハードルはそこそこ高いのですが、国家資格ではないこともあり、臨床心理士の年収は一般的に300万〜400万円程度で、さほど高収入とはいえません。
でも、年金も貯蓄もある定年退職後であれば、年収300万円でもとくに不自由はしないでしょう。20代そこそこの若い臨床心理士より、歳をとった人にカウンセリングをしてもらいたいと思う人は少なくないはずで、臨床心理士としても、この年代はむしろ向いているといえるかもしれません。
お金のことをあまり重視せずに仕事を選ぶことができるのは、リタイア世代の特権でもあります。いま、介護の仕事は人手不足といわれていますので、ある程度、体力があるなら、定年後や子育て、あるいは自分自身の親の介護を終えたあとに介護の仕事をするというのも、意義のある選択だと思います。
高齢者の就業率が高い県は平均寿命も長い
介護の仕事は、年収300万円台が中心です。業務内容のわりに年収水準が低いことが人材不足の要因ですが、定年後に始めるのであれば、年収にはあまりとらわれずにすみます。そして、年収にとらわれなければ、他人に深く感謝される介護の仕事のやりがいを、より強く実感できるのではないかと思います。
高齢になっても働きつづけることは、健康や長寿の面でもプラスであることは確かです。たとえば長野県のように、高齢者の就業率が高い県は平均寿命も長く、高齢者1人当たりの医療費も低い傾向があります。
ただ、「高齢者は働きつづけたほうがいい」というのは、どんなかたちであれ体を動かし、頭を働かせることを続けたほうがいいという意味であって、必ずしもお金をもらって仕事をすることだけを意味するわけではありません。ボランティアや趣味的な活動でもかまわないのです。
若いうちは、働く目的をお金や出世におくことが多くなりがちです。その場合、上司の言いなりにならざるをえなかったり、しなくてもいい妥協を強いられたりと、ストレスフルな労働になりがちです。自分で自由に頭を使いにくいのです。
歳をとったら、労働に対する意識を多少なりとも変える必要があります。自分にとってやりがいのあること、世の中のためになること、人の役に立つことのために働けるのが高齢期です。
お金や肩書のための労働から解放される高齢期だからこそ、自由に働ける喜びと、そのことで誰かに喜びをもたらすことのできる幸せを、存分に味わえるのだと思います。