1日3食の現代人に「飢餓状態」はやってこない

【尾形】飢餓状態になったときです。人間だけでなく生き物は飢餓状態に陥ったときに、いかに生き延びるかという情報が遺伝子に組み込まれています。だから、食料に困ってもすぐ死なないように、今は使わない分の糖質を肝臓に貯蔵しているんです。でも、実際どうですか? 私たちは1日に3食しっかり食べ、飢餓に苦しむ状態になんてなりません。むしろエネルギー源を摂りすぎなんです。でも、肝臓はまじめで、食事から摂ったエネルギー源をムダにしないよう、健気にもため込んでくれているんです。

【Aさん】てっきり脂肪になるのは、肉とかの脂なのかと……。

Aさんは、脂肪になるのは肉の脂や油ものだけだと思っていたようです。

【尾形】そう思うのもムリはありません。学校では、糖はエネルギー源と教わりますから。“糖の摂取が多すぎると脂肪として蓄積されて肥満になる事実”を、そろそろ学校でもきちんと教える時代だと私も思っています。

そして、Aさんは糖質の過剰摂取が肥満の原因になることを理解してくれたのでした。

野菜やフルーツをわざわざジュースにする必要はない

【Aさん】では先生、私は糖質が多いものを減らせばいいんですね?

【尾形】そういうことです。食事を丸ごと制限するのではなく、肝臓に悪影響を与える食事を減らすことが大事です。

【Aさん】具体的にはどうしたらいいですか?

【尾形】まず飲み物から見直しましょう。“砂糖水”をやめることです。食べ物よりも飲み物のほうが、圧倒的に肝臓へのダメージが大きいのです。空腹時に一気に砂糖入りの甘い飲料を飲んだりすれば、血液中に一瞬で糖が増えます。これが続けば、糖尿病にもなりかねません。実際、脂肪肝の人の約半数に糖尿病や糖尿病予備群があると言われます。Aさんは野菜ジュースをよく飲んでいるとおっしゃっていましたね? 野菜ジュースも、乳酸菌飲料も、エナジードリンクも砂糖水です。

野菜や果物が入ったミキサー
写真=iStock.com/nevarpp
※写真はイメージです

【Aさん】自家製のフレッシュフルーツのスムージーもだめですか?

【尾形】果物はジュースにしないで食べ物として、食後のデザートに楽しんでください。そうすれば、果物に含まれる食物繊維を一緒に摂取できます。食物繊維は果物に含まれる糖の吸収を遅らせてくれるので、わざわざ取り除いたり、細かくしたりしてはいけません。

Aさんは野菜不足の解消のために、わざわざジュースにして飲んでいたようでした。

【尾形】野菜もそのまままるごとがいいですよ。旬の野菜をスープにしたり、蒸して食べてもいいですね。