最も安全な飲み物はお茶と水

続けてAさんに伝えたのが、シンガポールで行われている甘味飲料の栄養成分表示義務付けについてです。

尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)
尾形哲『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)

【尾形】シンガポールでは、肥満・糖尿病対策の一環として、2019年から100mlあたり10g以上の砂糖を含む清涼飲料水や果汁100%ジュース、砂糖・ミルク入り飲料などの広告を全面禁止にしています。2021年からは糖分を多く含む甘味飲料は、栄養成分のラベル表示を義務付けるようにもなりました。

【尾形】さらに、シンガポールでは飲料を糖分含有量に応じて4段階のグレードに分けていて、最も安全なグレードにあるのが水と無糖茶です。スマート外来で飲んでいいものに挙げている、水、お茶と一致します。健康リスクのレベルをきちんと表示させることで、国民の健康を守ろうとするすばらしい取り組みです。

飲み物を変えるだけで肝臓の調子は良くなる

【Aさん】先生、カロリーゼロ飲料も飲まないほうがいいですか?

【尾形】砂糖は入っていなくても、カロリーゼロを謳っているドリンクには甘味を出すために人工甘味料が使われています。人工甘味料そのものでは太りませんし、人工甘味料が有害だという明確なエビデンスもありません。でも、甘い飲み物はカロリーゼロでも食欲増進作用があるんです。

【尾形】一方で、水かお茶、ブラックコーヒーを飲んでいれば、知らず知らずのうちに、食事の摂取全体を減らすことができるのです。もう1つ、甘い飲み物をやめる理由があります。砂糖は、果糖とブドウ糖からできているのですが、このうち、果糖には直接肝臓の細胞を傷害する作用があるのです。果糖は、食物繊維と一緒にゆっくりと吸収されれば、小腸の酵素でブドウ糖に変わります。しかし、飲み物で果糖を摂ってしまうと、酵素の働きが間に合わなくて、果糖のまま肝臓に向かってしまうのですよ。体の55~60%は水分です。だから、飲み物を変えるだけでも肝臓は喜びますね。