「あやしい話にはウソが多い」
特に文章量の多い総力特集においては、最初に、どこが謎で、どうして科学では説明できないのかという部分を丁寧に説明しなければならない。
意外に、ここが難しい。とかく、あやしい話にはウソが多い。謎といいながらも、トリックなどで説明できる場合もある。故意ではないにしろ、超常現象だと誤認し、当事者が思い込んでいる可能性もある。
UFOや超能力、心霊にしても、これらに接して人間が最初に抱くのは疑念である。思わず「ウソ‼」と口にしてしまうのは、その証拠である。不可解な現象に対する恐怖のような感情が防衛本能を呼び覚まし、反射的に身構えてしまうのである。もっとも、これが病みつきになるのではあるのだが。
しかるに、納得させなければならない。一般の人間が抱く疑問をひとつひとつ丁寧に検証していく。
現代科学ではなく、未来科学なら説明できるかも
例えばUFO写真。まずはトリックの可能性はないか。鳥や飛行機などの誤認ではないか。光学的なレンズフレアやゴーストで説明できないか。考えられる可能性を一通りつぶしていき、どうしてもわからない部分を浮き彫りにしていく。
常識的な仮説をもって解明できない謎を特定したうえで、いよいよ推理に入る。
現代科学では説明できないのなら、未来科学なら説明できるかもしれない。昔の錬金術の一部は現在の化学で解明されている。魔術的な新しい物質の創成は、化学反応によって説明は可能である。
同様に、未来において発見されるかもしれない法則を想定するのだ。ある意味、これはSF小説の設定に近い。UFOでいうならば、まさしく反重力だ。まだ発見されていない反重力を想定すれば、UFOの不可解な飛行は説明できるのだ。このあたりの推理は大胆でいい。むしろ、どこまで飛躍できるかが勝負である。学校の先生や学者の方々が思いもつかないような仮説、そう、突拍子もない発想による異説を展開するのだ。
研究結果よりも大事なのはストーリー
ただし『ムー』は学術誌ではない。科学論文を載せているわけではない。あくまでも知的エンターテインメント雑誌である。超仮説ともいうべき論説を語るときに、もっとも大事なのはストーリーである。
かつての偉人、アルキメデスには風呂、ソクラテスには悪妻と監獄、そしてニュートンにはリンゴがあった。彼らの研究は非常に革新的ではあるが、それよりも大事なのは、発見にまつわる物語なのだ。
ドラマティックなエピソードの中に偉大なる発見の鍵がある。超常現象の謎解きにあたっても、ここがもっとも重要だ。『ムー』の総力特集では、筆者の方に一番、力を入れてもらっているのが、大胆な推理に至るドラマ性なのである。