プーチン主義者の好むスローガン

立ち上がるロシア──これはプーチンやプーチン主義者の好むスローガンだった。「レーニンによって作り出されたウクライナ」という最近の発言にも、イリインの思想が響いている。

実際には、ウクライナを独立させたのはレーニンではなく、レーニンの主導で憲法制定議会が解散した直後の1918年1月に、キーウの中央ラーダ(ウクライナ中央議会)が独立を宣言したのだが……。この国家はレーニンの功績によってできたのではなく、せいぜいレーニンが不当な侵略を行ったからできたものだ。

「ボルシェヴィキの支配の後、ロシアの権力が再び反国民的、反国家的になってしまい、外国人に取り入り、国を分権化して愛国心を持たないようにしてしまったら、そして、レーニンが国家の地位を与えてしまったみだらな小ロシア人(ウクライナ人)を認めることなく偉大なロシア人の国家の利益だけに奉仕しないなら、革命が止むことはなく、西側の堕落のもとで滅びていく新たな局面を迎えてしまうだろう」と、イリインは確信していた。

「プーチンのもとでロシアは立ち上がったのだ!」と支持者は好んで言う。しかしある人が冗談で言ったように、よしんばロシアが本当に立ち上がったとしても、すぐに四つんいになって、腐敗、権威主義、当局の横暴、そして不幸の奴隷になったのである。

そして今は、戦争の奴隷になった、と言い添えることもできよう。

プーチンを肥大化させたのは誰か

この20年間で多くのことが起こった。この大統領の顔も、非情さ、恨み、不満を発する硬直した仮面になった。

コミュニケーションの主な手段は嘘だ。小さな嘘から大きな嘘まであるが、小さな言い訳も根本的な嘘も、実に多様な自己暗示で彩られている。ロシア人はこの大統領の嘘のレトリックに慣れきってしまっている。そして残念ながらヨーロッパの人々にもそれは受け入れられている。

プーチンの内部の怪物は権力のピラミッドのみによって育てられていたわけではない。まるで皇帝が役人に対してするように、プーチンがときおり自分の食卓から腐敗という名の脂肪の塊を投げてやっていた、お金で意のままになるロシアのエリートだけがあの怪物を育てたわけではない。

クレムリンに飛び、(最近では例の偏執症的に長い机の前で)嘘をたらふく食わされ、嘘にうなずき続け、記者会見では「建設的な対話」などと言って再び飛んで帰る、そんなヨーロッパの国の首脳は一人だけではない。

無責任な西側の政治家、冷笑的なビジネスマン、腐敗したジャーナリストや政治学者によっても、プーチンは肥え太らされたのである。

強くて妥協しない支配者! みんながそれに熱狂していたではないか! ウォッカやキャビアのようにわくわくする「ロシアの新しいツァーリ」に。