国内メディアを利用して国民の洗脳に励む

メディア支配による巧みな国民洗脳の手法も同じだ。かつてナチス政権は、ヨーゼフ・ゲッベルス国民啓蒙・宣伝大臣を中心に徹底したメディア統制を行い、ヒトラー崇拝をドイツ国民の隅々までいき渡らせた。

プーチンも同じようなメディアを利用した宣伝を、権力者となったと同時に始めている。彼の場合、ナチスを参考にしたというより、旧ソ連で思想統制を行っていたKGBの手法を復活させたということだろうが、結果的に「やったことはナチスと同じ」だ。

こうして国内のメディアをほぼ掌握したプーチン政権は、ロシア民族主義・愛国主義の宣伝を強力に進め、国民の洗脳に励んだ。とくにテレビに情報源を頼る地方在住の中高年層は、プーチン政権が流す創作された「物語」(悪いのは米国だ、など)だけを目にすることになった。

また、国内法的にも情報統制を進め、現在では国家の権威、すなわちプーチンそのものを侮辱することも違法になっている。これもナチスと同じく「独裁者崇拝」の再現だ。

重要なスピーチ
写真=iStock.com/EduLeite
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プーチンの思想が顕著に分かる「誤配信」問題

プーチンの思想もナチスに酷似している。その一例として、ウクライナ侵攻の2日後に起きた、国営通信社による記事の「誤配信」を紹介したい。

これは「ロシアによる進撃と新たな世界の始まり」と題した記事で、以下のようにウクライナ侵攻の“成功”を祝福する内容だった。

「ロシアは歴史的な完全性を取り戻しつつある」
「反ロシアのウクライナはもう存在しない。ウクライナはロシアの手に戻ってきた」
「プーチン大統領はウクライナ問題の解決を後世に残さないと決定することで、歴史的な責任を引き受けた」

これは当初、ロシア軍が数日で首都キーウを制圧する計画だったため、そのタイミングで出す予定だったようだが、実際にはウクライナ軍の抵抗により首都陥落はなかった。ところが予定稿が誤ってそのまま配信され、慌てて削除したが、それがネットで出回ったのだ。