そして先進国にとって極めつきとなったのは、産業だけでなく社会の構造を大きく変えようとしているデジタル化の流れだ。たとえばデジタル時計といえば、500円の時計も50万円の時計も、時間の精度は変わらない。それは、同じチップを使っているからだ。

このデジタル化された産業、社会の時代においては、新興国も先進国と同じレベルの製品が作れてしまう。つまり、デジタル化の流れによって先進国の強みは奪われてしまったのだ。ソニーやパナソニックが枕を並べて討ち死にしている理由もここにある。

さらに、90年代のインターネット革命からフェイスブックなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)革命への流れも、世界を大きく変容させた。SNSに関わるすべての人は、情報の受信者であると同時に発信者である。そして、既存のマスメディアを含め、いままで情報をコントロールしてきたあらゆる権威が覆される時代になっている。SNSの出現で、世界中の人々が横につながり、政治・経済的にも全く新しい可能性が広がった。

しかしながら、その流れがいきすぎれば社会の安定を揺るがし、新しい(イカサマな)権威を生み出す素地となる危険性も、同時にはらんでいるのだ。

ここ10年の世界の潮流をきちんと押さえたうえで、いま、世の中で起きている現象にどういう意味があるのかを説く。そして、そこに豊富な経験と過去の教訓を照らし合わせながら、出現しつつある新たな時代との向き合い方を提案していく。それがホンモノの「識者」というものだ。そしてそういう識者でなければ、選挙期間中のマスコミの誹謗中傷をtwitter一つではね返した橋下徹という新しいタイプの政治家とは対等に渡り合えない。

※すべて雑誌掲載当時

(小川剛=構成)