ワクチンが製造から販売されるまでの3つのプロセス

ここで、ワクチンの製造から認可を経て販売に至る過程をまとめてみよう。

製薬会社がワクチンを製造し、認可、販売までこぎつけるには、以下の第1相から第3相までの試験をパスする必要がある。

(一)第1相試験:人体に対してはじめてワクチンを接種する段階で、ワクチンの消化管からの吸収、体内への分布と反応、体外への排出の諸過程を調べるとともに、その副作用の有無(安全性)を検討する。被験者は、このテストの目的を理解した健常人が選ばれる。

(二)第2相試験:これは症状が比較的軽い感染患者を対象として行うテストで、患者にはワクチン接種の目的を知らせない。プラセボ効果を除外するためである。このテストで、最も安全で効果の大きいワクチンの接種法を決定する。

(三)第3相試験:第2相試験で決定した方法に従って、ワクチン接種を行う。この際、被験者を無作為に二つのグループに分け、一方のグループには真のワクチンを、他方のグループには偽のワクチンを接種する。この第3相試験には、1万から3万人の被験者が必要とされる。そして、これら二つのグループ間でのワクチンの疾病に対する予防・治癒効果に統計的な有意差があれば、そのワクチンの製造・販売が認可されるのである。

さて言うまでもなく、数万人のオーダーの被験者を必要とする第3相テストは、予め準備がなされ、十分な数の被験者が確保されていなければ、実施は困難である。

「島国で人口が少ない」は理由になっていない

この点について、一時テレビや雑誌などで奇妙な説明がなされていた。「我が国は小さな島国で、人口も少ないので、とても数万人のオーダーの被験者を揃えることはできない。したがって国産のワクチンは作れない」というものである。

しかし人口が我が国の半分もいない英国や、さらにはるかに人口の少ないベルギーなどでも、とうにワクチンが製造販売されているではないか。説明になっていない。

ついに本年(2021年、執筆時)4月下旬の「毎日新聞」に、我が国のワクチン対策が「周回遅れ」であると断じる記事が掲載された。またGoogleにも同様の記事があり、厚労省のワクチン準備に関する「不作為」が明らかになった。