同じ敗戦国のドイツと日本の違い
最後に、日本と同じ敗戦国だったドイツの憲法制定はどうだったのかを紹介しましょう。こちらは日本とはかなり異なった経緯をたどることになりました。
日本とドイツの状況の最も大きな違いは、終戦前までの統治機構が残っていたかどうかという点でしょう。
天皇や内閣制度、官僚機構が残って、占領軍がこれらを通じて間接的に統治したのが日本ですが、ドイツの場合は、もともとの統治機構(ナチドイツの政治体制)が消滅し、占領軍が直接統治するようになったのです。
いずれにしても新たな憲法が必要になりますから、占領軍の指示を受けて、ドイツ人の法律家や学者などから構成された委員会が選ばれ、憲法案をゼロから作成し占領軍と協議しながら「ドイツ連邦共和国基本法」を完成させたのです。
結果としては、終戦前に存在したナチの政府が完全消滅したドイツでは、ドイツ人が自主的な憲法案を作って占領軍と調整しつつ完成させました。
逆に終戦前までの政府が残った日本は、古い発想のまま憲法案を作ろうとしたために占領軍にダメ出しをされて、占領軍からたたき台を受け取って手を加えることになったのでした。
皮肉な話になりますが、古い政府体制が残った日本では、古い考えの憲法案を作ったために占領軍に受け入れられず、新たな案を与えられてやり直すことになった一方で、古い政府体制が消えたドイツは、それまでとはまったく違う発想で自主的に憲法を作ることになったというわけです。