息子の心の安定の理由は「愛してる」と「ハグ」
政治家である夫の小泉進次郎さんともども、何かと注目されることが多い滝川さん。世間の目から子どもを守るために、家の中では、安心してすごさせたいと語る。
「そのために、1日10回は『好きだよ、愛しているよ』と言って、息子をぎゅっと抱きしめています。自分はとても大事にされているのだ、という安心感を持ってほしいのです」
それが、息子さんの精神の安定につながっているのだろう。
しかし、以前手を焼いた事件があったという。息子さんが生後10カ月のとき、滝川さんが仕事で3日間家を空けなくてはならないことがあった。帰宅して息子さんに再会したところ、滝川さんのことを無視してきたそうだ。
「私が何を言っても全く反応しないのです。背を向けておもちゃをいじったり、抱っこしようとすると大泣きしたり……。そんな状態が3日続いて、ほとほと困り果てました。ショックで母親をやめたくなったほどです(笑)。4日目にはやっともとに戻りましたが、それぐらい息子にとって、私がいないことが許せないことだったのだと痛感しました。そして思い込んだらテコでも動かない、彼の頑固な性格も知りました」
自分が全幅の信頼を寄せている人が長時間そばにいないことの辛さ、悲しさを知らしめるような、そして物言わぬ抗議のような態度に、10カ月とはいえ、意志の強さを感じたそう。
それは飼い犬のアリスにも共通している、と滝川さんは振り返る。
「アリスは、東日本大震災後の福島県で引き取った保護犬です。彼女も、私が長期出張から戻ってきたとき、怒っているかのように、しばらくケージから出ようとしないことがありました。家庭という小さな社会の中で、動物や子どもに疑いようもない愛情を注ぐのが、親であり飼い主の務めなのだと学びました」
だからこそ、息子さんにもアリスにも、毎日「愛してるよ!」と言いながらのハグは欠かさない。そして、アリスの存在もまた、息子さんの情緒の安定に一役買っているのでは、と滝川さんは分析する。
「息子とアリスは家ではいつでも一緒。くっついて寝て、じゃれ合って遊んで、まるできょうだいのように暮らしています。犬から見つめられると、脳内物質のオキシトシンが出て、幸せな気持ちになれるといわれています。もちろん、危険がないように、犬も子どもも目の届くところにいるのが前提です」
オキシトシンは、別名「幸せホルモン」または「愛情ホルモン」と呼ばれる。例えば、母親が赤ちゃんを抱きしめることで脳の視床下部からオキシトシンが分泌され、じんわりと優しい気持ちになる。動物との触れ合いで、濃度が高いオキシトシンが分泌されるのは、犬だけだとの研究結果もあるという。
動物福祉・生物多様性保全のための財団を設立した滝川さんは、小さな子がいる家庭で動物を飼うことはおすすめだと断言する。精神の安定以外にも、動物を大切にする気持ち、他者に対する譲り合いの気持ちの醸成にもつながるからだ。子どもたちに、動物を大切にする気持ちを持ってもらいたいと、財団で作った絵本を無料配布する活動も行っている。