ギャンブル依存症

2008年10月ごろのことだ。

庄司さん(当時40歳)は職場の同僚から「お前の奥さん、よくパチンコ屋で見かけるけど大丈夫?」と言われる。帰宅後、気になって銀行通帳などを調べると、庄司さんの給料が振り込まれる生活費用の口座はほぼすっからかん。

結婚後、家計の管理は妻に任せていた。2007年4月に長女を保育園に入れ、5月から妻は保険の外交員として働き始めていたが、その給料は影も形もない。聞けば、全額スロットにつぎ込み、それだけでは飽き足らず、生活費を使い込み、借金までしていたのだ。その額、およそ60万円。

その借金は、全額庄司さんが返済した。妻は、「もうやめる」と言って反省したため、当時の庄司さんはそこまで深刻に考えていなかった。

ところがこの後、数カ月〜4年ほどの間隔で、妻は借金を何度も繰り返す。

庄司さんは、その度に妻と話し合いをするが、だんだん夫婦間で話し合うだけでは意味がないと思うように。そこで、庄司さんは妻の両親に相談することにした。

電話で妻の借金について伝えると、義母は心から申し訳なさそうに謝り、「返さなくていいから」と言って100万円出してくれた。

それでも妻の借金は止まらない。再び発覚すると、庄司さんは義母に連絡。すると義母は50万円を貸してくれ、「また娘がギャンブルをやったら知らせてほしい」と言った。

パチンコ玉が詰まったケースが並ぶ光景
写真=iStock.com/hiloi
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そしてまた妻は借金を作った。庄司さんが義母に連絡すると、「何で電話してきたの? また金を奪いたいの?」と豹変ひょうへん

その頃、度重なる借金に、「もう妻に家計を任せておけない」と考えた庄司さんは、自分が家計を預かることにしていた。義母は、「あなたが家計を奪い、娘を監視して嫌みを言うから、娘にストレスがたまる。娘がギャンブルをやめられないのは全部あなたの責任!」と庄司さんを罵倒した。

以降、庄司さんから義母に連絡することはなくなった。だが、妻が金の無心をしたらしく、また義母は50万円貸してくれた。

妻は、社会に出たばかりの頃もスロットにのめり込み、何度か借金を繰り返していたらしい。結婚前、庄司さんは義父から、「娘はギャンブルで借金して、カード会社のブラックリストに載ったことがある。気を付けたほうがいい」と言われていた。

「その時は、ギャンブル依存症についての知識もなく、『今やめているならいい』と、深く考えませんでした」

庄司さんは、妻の借金が発覚するたびに、子どもが寝静まった後、どうしたらやめられるかを2人で考え、対策を繰り返していた。