家族会議

子どもたちは、小学校の低学年くらいから、母親がスロットに通っていることを知っていた。妻は子どもたちに、「パパには言わないでね」と口止めしていたが、庄司さんは子どもたちに、「ママがスロットに行っていたら教えてくれ」と言っていた。たびたび借金していることも、子どもたちは気付いていたようだ。

「誓約書は、いわば抑止力だと考えていました。ギャンブル依存症が麻薬中毒などと同じで、自分ではどうしようもできない病気であることは、僕もさんざん関わってきたので知っているつもりです。でも借金取りは、『病気だからしかたない』とは言ってくれません。このまま妻のギャンブルに付き合っていたら、子どもたちは進学をあきらめなければならないかもしれないし、僕は借金返済のために働かなければならなくなる。それは避けたかったのです」

庄司さんは日曜日、妻と子どもたちをリビングに集めた。そして子どもたちに、家族会議を開いた経緯を話す。

夫婦で話し合い
写真=iStock.com/kazuma seki
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「僕としては妻が、『何とかやめるように努力する』と言い、子どもたちと一緒に、どうしたらギャンブルをやめられるかを考えて、『家族みんなで協力していこう』となると思っていました」

しかし、シナリオ通りにはいかなかった。庄司さんが何を聞いても、妻は何も答えないのだ。

「ギャンブルをやめようと思わないのか?」と聞くと、ただ妻は隣にいる娘の手をぎゅっと握るだけ。妻が答えないため、「離婚していいのか?」とたずねると、妻はうなずいた。

「子どもたちは僕が引き取るから、ひとりで生きていくことになるんだぞ?」
「家族でギャンブルをやめる方法を考えて、その努力をしていこうと思わないのか?」

庄司さんは、妻に助け舟を出すつもりで言ったが、やはり妻は黙ったまま。

「じゃあ離婚しよう」と、庄司さんは言うしかなかった。

高1の息子は「あーあ」という顔をする。中2の長女は泣いていた。

「別れたら実家に帰るの?」と庄司さんがたずねると、今度は「実家には帰らない」と妻が即答。「アパートを借りて一人で暮らすの?」と聞くと、妻はうなずく。「仕事も見つけないとだめだし、大変だぞ。やっていけるの?」と言うと、「やっていける」と答える。

最後に庄司さんは、「じゃあ、今は体調が悪いようだから、よくなったら離婚しよう」と言い、家族会議は終わった。しかしこの先、妻の体調は良くなることなどなく、悪化の一途をたどっていくのだった(以下、後編へ続く)。

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