金融機関のサイトに、よく「○○証券の名を騙って未公開株式の販売・買取を勧誘する事例が報告されています」といった注意文が掲載されている。未公開株式投資について、国民生活センターに寄せられた相談件数は、この2~3年で急増している。2007年度が2616件、08年度が3071件、09年度が6116件、10年度が8548件という具合だ。11年度は11月末までで4648件で、これは前年同期の4457件を上回っている。
未公開株式とは、証券取引所に上場される前の株式のことで、通常、この手の株式を一般個人が売買する場合は、日本証券業協会が運営している未公開株式の売買市場である「グリーンシート市場」の登録銘柄に限定される。それ以外の方法で未公開株式を売買しようと思ったら、その会社の従業員になり、持ち株会を通じて購入するよりほかに手はない。つまり、一般個人の未公開株式投資は、極めて方法が限定されている。
したがって、あまり聞いたことのない会社から、「未公開株式を買いませんか?」という誘いの電話、もしくは訪問があったときは、9割方はまず詐欺だと見て間違いない。
以前は、営業担当者が直接訪問してきて、株式は未公開だけれども知名度の高い企業名を持ち出し、新聞や雑誌の切り抜きを見せながら、成約に結び付けるといった手法が大半を占めていた。ところが最近は手口がより巧妙化している。
ある日突然、「○○工業の未公開株式を持っていませんか?100株500万円で買い取ります」という電話がくる。当然、そのような未公開株式を持っていないあなたが「持っていません」と伝えると、そこで一旦、電話が切れる。しばらくして、今度は別の人から「○○工業の未公開株式を買いませんか。100株300万円でお売りしますよ」という電話が入ってくる。この電話を受けたら、あなたは「300万円の○○工業の株式を500万円で売れる。200万円の儲けだ」と思うだろう。そして、後から電話をくれた人に、未公開株式購入の意思があることを伝え、指定された口座に300万円を振り込む。