もう、結末はおわかりだろう。最初に電話をくれた人と、その後から電話をくれた人は仲間で、現金を振り込んだら最後、二度と連絡が取れなくなってしまう。当然、未公開株式は手元に届かず、そもそもそのような株式は存在しないということに、この時点でようやく気づく。
こうした「劇場型」といわれる手法のみならず、金融庁などの公的機関を装った人から「上場予定の企業情報」として、ある会社の情報がもたらされ、その会社の未公開株式を買わされてしまう「公的機関装い型」とも言うべき手法もある。いずれも後から冷静に考えれば、「そんなうまい話はない」ということになるのだろうが、人の欲を煽るセールストークに乗せられてついお金を払ってしまう。
昨今のように不況色が強まると、この手の事件が多発する傾向が見られる。未公開株式を譲渡する場合は、その会社の取締役会での事前承認が必要なので、業者を通じて、会社とまったく関係のない人に未公開株式を譲渡するということ自体、まずありえない話だと理解するべきだろう。冷静な判断をさせないようにするため、「この話はあなただけにお知らせする特別な情報です」などとも言ってくるだろうが、そもそも投資の世界に、「あなただけに教える特別な話」など絶対に存在しない。そして、この手の詐欺に引っ掛かったら最後、お金はまず戻ってこないと、頭に刻み込んでおくことだ。
被害に遭いやすいのは圧倒的に高齢者だ。自分の親をこの手の詐欺から守るために、コミュニケーションを密にしておくことなども大切である。