成城石井が上場を目指しているという日本経済新聞の報道が話題になった。そもそも成城石井の強みは何なのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「成城石井は経営学的には“差異化戦略”をとっている。この戦略を理解すれば本当に買うべき商品がわかる」という――。
スーパーマーケット成城石井=2021年2月19日、東京
写真=アフロ
スーパーマーケット成城石井=2021年2月19日、東京

株主が何度変わっても、クオリティが下がらなかった

人気のスーパーマーケットの成城石井が2023年度までの上場を目指しているという報道が話題を呼んでいます。成城石井は東京の高級住宅街である成城の食品店が1976年にスーパーに業態転換して始まりました。私の学生時代のテニスサークルの集合場所が成城石井の前で、それでちょくちょく利用したのが私の場合の最初の思い出です。1988年に第2号店が青葉台に開店し、そこから多店舗展開が始まり、直近で東北、関東、甲信越、北陸、東海、関西、中国地方で約200店舗を展開するところまで大きくなりました。

成城石井の興味深い点は2004年以降、株主が外食産業、投資ファンド、そして2014年にはローソンと目まぐるしく変わっていったにもかかわらず、クオリティが下がらなかった。いやむしろ上がっていることです。相当に現場の社員力が高く、かつ株主もその強みを損なってしまったら金の卵を産む鶏を殺してしまうことを理解していたからだと思われますが、これは株主に翻弄ほんろうされる日本型資本主義の興味深い例外事例に思えます。

さて、成城石井は業態的には高価格帯スーパーです。コンビニよりもやや大きい、しかし大手のスーパーマーケットと比較すればかなりコンパクトな店舗の中にこだわりの商品が並びます。高価格帯スーパーは富裕層をターゲットにするお店が多いのですが、成城石井には庶民が普通に買い物を楽しんでいるという特徴があります。しかし高価格帯スーパーを庶民が使う場合、なんでもかんでも成城石井で買っていたらお財布が心配です。

そこで今回の記事では「経営コンサルタントの視点で見た成城石井で買うべきお得な商品」を3つの切り口で紹介したいと思います。

近所のスーパーとの価格差は「コンビニと同じ」

私も成城石井は好きでよく買い物に出掛けます。ただ経営コンサルタントの性というか、買わない商品は買わない。その買わない典型的な商品について、成城石井の価格を見ることから始めてみます。

近所の成城石井のお店では、私が他店でよく購入するキリンの「アルカリイオンの水」は140円(税込、以下同じ)。ちなみに他店だと103円です。1リットルサイズの牛乳で一番お手軽なものが静岡産の牛乳で259円。私はだいたい193円ぐらいで他店の牛乳を買います。計算してみると、近所のスーパーやドラッグストアと比較すれば成城石井はざっくりと言えば1.35倍ぐらいお高い感覚です。

そしてここが私は面白いところだと思うのですが、この1.35倍という数字、実は一般のスーパーとコンビニで全く同じ商品を購入した場合の価格差とほぼほぼ同じ数字になります。価格が割高なのにコンビニで買い物をする人が多いのはかつては「便利だから」と言われていました。ところが最近はこの風向きが変わっています。