60~80代の過半数がYouTubeを見ている

情報収集していますから社会から遮断されにくく、孤立しにくい。そういう意味では、パソコンを使わない同世代に比べて幸福度が比較的高く、したがって消費意欲もまだ残存していると考えるべきでしょう。

心が前向きでないと消費意欲は湧いてこないものです。団塊世代~シラケ世代の消費傾向は「高齢者」として十把ひとからげにするのではなく、パソコンを使っている層(900万人)だけを狙う、というのが正解です。

ただ、パソコン使いのデジタル高齢者といえどFacebookやインスタグラムといったSNSはほとんど使っていません。比較的よく使うのはLINE、閲覧するのはYahoo!ニュース。

したがって、若年世代や新人類・バブル世代のように、Facebookでコミュニティ消費が促進されたり、トレンドに火がついたりするような現象はあまり期待できないでしょう。

実はデジタルデバイスを経由して彼らにもっとも届く広告は、YouTubeの動画広告です。意外に思われるでしょうか。でも前出の調査によれば、パソコンを持っている60~80代の56.6%がYouTubeを見ています。結構多いですよね。

パソコンを使用する高齢の男性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

団塊世代のTV離れが起きてしまったワケ

その理由は、TV局のコア視聴率シフトに関係があります。

TV局各社は2年ほど前から、従来型の世帯視聴率(TV所有世帯のうち、何世帯が視聴したかを示す割合)よりも、13歳から49歳(局によって微妙に異なります)の視聴率、いわゆる「コア視聴率」を重要視するようになりました。

そうしたのには理由があります。平成の時代はずっと人口の多い高齢者、主に団塊世代がTVを一番長く見る層だったので、彼らをメインターゲットにした番組に一番お金をかけましたし、その想定でスポンサーにお金を出してもらっていました。

ところが、ここ数年は団塊世代がそんなにお金を使ってないことが判明してしまいました。ということは、団塊世代向けの商品でTVスポットを打っても効果が少ないわけです。

であれば団塊世代は切り捨てて、番組づくりそのものをもっと若い人向けにしよう……ということで出てきたのが、「13歳から49歳の視聴率を重視」という発想だったわけです。たけしさんはじめ団塊世代のタレントや司会者の世代交代は、このようにして起こりました。

高齢者である彼らは番組のメインターゲット(13~49歳)から外され、かつ同世代出演者の世代交代も進んでいるため、見たい番組が減ってしまった。それでYouTubeに流れました。

TVが持つ慢性的な弱点

彼らはYouTubeで、好きだった芸能人の過去映像や、趣味に特化した動画などを浴びるように見るようになりました。メディア視聴習慣が変わったのです。

インタビューで採取された例としては、「クラシック音楽好きの方が海外の交響楽団の演奏を検索で探して視聴」「昔の時代劇を見る」「加山雄三のコンサート映像を観る」など。

ひとり暮らしをされている団塊世代の女性は、ジャニーズの9人組男性アイドルグループSnow Manの動画を日々あさっていました。2022年現在、TV各局はBS放送で積極的に高齢者向けのコンテンツを増やしていますが、往時の地上波ほどの充実度ではありません。

結果、高齢者がTVからYouTubeに逃げてしまっているわけです。

TVの慢性的な弱点は、好きな時に好きなものが見られないことです。若者だけでなく高齢者とてその不便は同じ。パソコンを持っている彼らの56.6%が不便を解消する方法としてYouTubeというメディアを発見したのは、当然と言えば当然です。