たけし、タモリ、小倉智昭が第一線から引退

TV業界にも、その波が押し寄せています。例えば、1947年生まれの団塊世代であるビートたけしさんは、長らく出演してきたTBS系『新・情報7daysニュースキャスター』を2022年3月で“卒業”しました。

約40年にわたり芸能界の第一線で活躍してきたたけしさんも、さすがにもう第一線ではなくなったということです。

ここ数年を振り返っても、たけしさんより2つ年上のタモリさんが、2014年に32年続いた『森田一義アワー 笑っていいとも!』を終わらせました。

たけしさんと同じ1947年生まれの司会者・小倉智昭さんは、22年続いた『情報プレゼンター とくダネ!』を2021年をもって終了させました。

この世代のビッグネームの“第一線引退”が何を意味するか。要は、これらの番組にCMを出広する広告主が、出演者と同世代の視聴者に「もう購買力がない」ことに気づいたということです。

だからこそ、出演者の世代交代が矢継ぎ早に進みました。もう団塊世代は「消費者としてメインターゲットではない」と各企業から判断されてしまったのです。

「人生100年時代」と言われますが、日本人の寿命はもうそれ程大きくは延びなくなってきていますし、仮に100年であったとしても、企業にとっての優良消費者である期間は元気で収入のある現役世代までの、せいぜい74歳の前期高齢者までであるのが明確になったのです。

団塊世代の消費欲を分けるのはパソコン

団塊世代は基本的に旺盛な消費欲がありません。

しかし、シラケ世代と合算して年齢幅を広げれば、そこには消費に関してグラデーションが見てとれます。つまり、比較的消費する層としない層がいる。

では、その分水れいはどこにあるのでしょうか。ズバリ、「パソコンを使えるか、使えないか」です。

2021年、全国の高齢者(60歳以上の男女640名を対象)に対し私が行った調査によると、携帯電話(ガラケー)使用者は全体の40.4%、スマートフォンは50.1%、パソコンは20.9%、タブレットは14.4%、いずれも所有していない方は12.1%でした(複数回答あり)。

約900万人いるデジタル高齢者

ここに、60代以上の人口4376万人(総務省統計局、2021年10月)を重ねて考えてみましょう。まず、全体の12.1%はデジタル難民です。人口で言えば529万人。この人たちにはTVや新聞の折込チラシ以外に、消費を煽る情報が届けられません。

彼らの5年後、10年後を見越してマーケティングを行うのは非常に難しいでしょう。残りの87.9%(人口にして3847万人)には届く可能性がありますが、高齢者は携帯電話はもちろんスマホも通話にしか使っていません。使っていても子供や孫とのLINE程度なので、企業が商品を売るために広告を届けることはできません。

可能性があるのは20.9%(900万人)を占める、パソコンを使っている高齢者です(タブレット使用者はパソコンとの併用者も多いと考えられるので除外します)。彼らはさまざまなサイトを訪れて情報収集をしますし、ネット通販もできる。つまり企業が広告を届けられる相手なのです。

この世代の男性は、先述したように会社勤め時代にパソコンを使っていました。ということは基本的にホワイトカラーですから、世代的に退職金もそこそこ多い。自宅にパソコンがあるということは、パソコンが買えるだけのお金といじれるだけの時間があることも意味します。すなわちマーケティングとして狙うべきは、この「デジタル高齢者」とでも呼ぶべき層です。